沖ノ島が日本国内17件目の世界文化遺産に登録されることが決まった。貴重な文化遺産は、なぜそこにあるのだろう? 日本にある世界文化遺産から3カ所を選んで解説するよ! 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、筑波大学附属中学校元副校長・山口正さん監修の解説を紹介しよう。
【日光東照宮(栃木県)】
■400年前の民間信仰が彫刻に
江戸幕府の初代将軍・徳川家康を祭る日光東照宮。「眠り猫」や、「見ざる・言わざる・聞かざる」の「三猿」の彫刻が有名だね。では三猿がなぜそこに「いる」のか、考えたことはあるかな?
三猿がいるのは、表門をくぐってすぐ左手の「神厩舎」と呼ばれる馬小屋だ。馬の天敵は河童だと、昔の人は考えた。馬が水を飲みに水辺に行くと、河童が出てきて馬をひきずりこもうとする。それを止めることができるのは猿しかいないと、民間信仰で信じられてきたんだ。三猿の彫刻は、馬を守っているんだね。ところで教科書などでおなじみの鎌倉時代の武士の館の絵(上)を覚えているかな? ここにも馬小屋につながれた猿が描かれているよね。理由は同じだ。
授業で習うことと旅先で見たものがつながるって、おもしろいでしょ? 知れば知るほど発見が増えるよ。
<猿はどこにいる?>
日光東照宮では……「神厩舎」(馬小屋)の上部
教科書の絵では……馬のそばにいる
【姫路城(兵庫県)】
■美しくそびえる城は見せびらかすため
現在の姫路城は、関ケ原の戦いのあと城主になった池田輝政が1608年ごろ築いたもの。修理を重ねて当時の姿をとどめている。
戦うためだけに建てられたなら、これほど美しい必要はないよね。主な目的は、見せびらかすためだったと考えられる。織田信長の安土城は琵琶湖を通る船を意識して、豊臣秀吉の大坂城は海上の南蛮船から見えることを意識して建てられた。姫路城も、西日本の諸大名に力を示すのに、おおいに役立ったはずだよ。
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