春、暖かくなると公園の植え込みなどに姿を現す「ナミテントウ」。その背中の模様にも、地球環境の変化が表れているという。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、日本各地でナミテントウを調査した、興味深い研究を紹介しよう!

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 新緑が鮮やかになる4月中旬から5月にかけて、本州から九州の各地でテントウムシが目につくようになる。よく見るのは、ナナホシテントウとナミテントウだ。ナナホシテントウは、赤い背中に黒い斑紋が七つあるのですぐわかるが、ナミテントウは同じ種でも背中の模様がさまざま。大きく「二紋型」「四紋型」「斑型」「紅型」の四つに分けられる。

 この四つの型の割合が地域によって異なることは1950年代から知られていた。「日本のダーウィン」と呼ばれた遺伝学者・駒井卓博士が各地で調査し、大きな傾向として、南へ行くほど黒い背中に赤い斑紋が二つある「二紋型」の割合が高く、北へ行くほど赤い背中に黒い斑紋がある「紅型」の割合が高いことを明らかにしていたのだ。すなわち、二紋型は暖かい気候に適応し、紅型は寒冷な気候に適応している。

■四つの型の割合が変わった

 地球の温暖化は今や誰もが実感し、気象庁も「日本の平均気温は、1898年以降では100年あたりおよそ1.1度の割合で上昇」と発表している。これがナミテントウの分布にどのような影響を与えているのだろうかと疑問を抱き、日本各地で四つの型の割合のデータを取り続けている遺伝学者がいる。京都産業大学の野村哲郎教授だ。

 野村教授は2002年から08年にかけて、全国の96カ所を訪れてナミテントウを採集し、四つの型の割合を調べた。こうしたデータを取るには、1地点で少なくとも100匹以上のナミテントウを採集しなければならないから、並外れた情熱と根気、労力が必要だ。教授は教え子などの協力を得ながら、全国で4万から5万匹ものナミテントウを採集した。

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AERA dot.編集部
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