●深海の地層が約1千m超も盛り上がって地上に!
地層の「厚さ」も、優れていた点の一つだ。千葉セクションは深さ500~1千mの海底に堆積した地層だ。しかも短い年月に大量の泥が堆積したので、平均で千年の様子が厚さ約2mにわたって記録されている。イタリアの二つの地層は、約1mと約20センチメートルだった。同じ千年だったら地層が厚いほど細かく区切って、地磁気や花粉の化石などの詳しい情報を取り出せる。
とはいえ、もしもそのまま、深い海の底近くにとどまっていたら、誰の目にもふれなかっただろう。幸いなことにこの地層はこれまでにおよそ1千m超も隆起し、川の流れに削られ、観察しやすい崖となったのだ。深い海の地層が数十万年の間にこれほど隆起する例は、世界中で見てもほとんどないと岡田教授は言う。
こうした条件がいくつも重なり、千葉セクションはGSSPとして認められ、「チバニアン」が新しい地質時代名となった。日本の地層の特徴から見て、今後、新しいGSSPとして日本の地層が認められる可能性は低いと岡田教授は指摘する。“最後のチャンス”をものにした「千葉セクション」と「チバニアン」の名は、「地球史」に永遠に残る。(サイエンスライター・上浪春海)
※月刊ジュニアエラ 2020年4月号より
ジュニアエラ 2020年 04 月号 [雑誌]
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