新型コロナウイルスの影響で、GDPが戦後最悪の下落となっている。年率で28.1%減という衝撃的な数字だ。どんな意味があるのか、小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」11月号で詳しく解説した。
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「コロナ危機で経済が冷え込んでいる」「4~6月期は戦後最悪のマイナス成長になった」。そんなニュースでよく出てくるキーワードがGDP(国内総生産)だ。この数字が年率で3割近くも減り、過去にない落ち幅として注目された。いったいどういうことだろう?
GDPは国の経済規模をはかる「ものさし」だ。世界各国で使われ、日本の場合は中央官庁の一つである内閣府が3カ月ごとに速報値を発表する。「個人消費」「輸出」「公共投資」などからなり、たとえば、読者のみんなの洋服代や、大人たちが居酒屋で飲むビール代、橋や道路の建設費もGDPの一部だ。その金額は、わが国の場合、ここ数年は毎年500兆円台だった。
このGDPが今年4~6月、物価変動の影響を除いた数字(実質GDP)で、直前の3カ月(1~3月)と比べて7.9%減った。同じ状態が1年間続くと仮定した「年率換算」では28.1%減となる。つまり、国の経済力が1年で3割弱も落ち込むことになる。これはリーマン・ショック直後の2009年1~3月期の年率17.8%減を上回る、衝撃的な大きさだ。
戦後、GDPが記録的に落ち込んだのは、リーマン・ショック後の2009年1~3月期(年率17.8%減)のほか、石油危機後の1974年1~3月期(年率13.1%減)の例がある。GDPは暮らしの変化に伴って基準がたびたび変わり、日本の場合、比較可能なのは1980年以降だが、今回の落ち込み(年率28.1%減)はけた違いに大きく、戦後最悪の下落といえる。
急落のわけは政府が「経済を止めた」ことにある。
4月から5月は新型コロナウイルスの感染拡大を防ごうと、政府が緊急事態宣言を出した。不要不急の外出自粛が呼びかけられ、買い物や旅行をやめる人がたくさん出た。洋服や車は売れず、レストランやホテルでは客が激減した。みんなの家の近所にも休業した店が多かったのではないかな?
モノが売れないために休む工場もあった。海外からの旅行客は姿を消し、自動車などの輸出も大きく減った。
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