「わが子にグローバル教育を受けさせたい」と思ったときに、まず思い浮かべるのは海外留学という方が多いでしょう。でも、海外に行かなくても国内でそういった環境を与えることができます。「AERA with Kids秋号」(朝日新聞出版)では、花まる学習会代表の高濱正伸先生を特別編集長に迎え、「多様化する学びの場」を特集。グローバル教育の例として日本初の全寮制国際高校である「学校法人ユナイテッド・ワールド・カレッジ ISAKジャパン」代表理事の小林りんさんに取材し、真のグローバル教育とは何か、学校設立までの経緯や教育内容などをうかがいました。
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長野県軽井沢にある「ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン」は、社会に変革を起こす「チェンジメーカー」の育成を理念に掲げ、2014年に開校。17年にUWC加盟校になりました。世界80カ国以上から200人の生徒が集まり、その7割に奨学金を給付しています。
こうした学校を作った背景には、小林さんが10代の頃、カナダに留学中に体験した出来事があります。
「クラスメートの故郷であるメキシコを訪れたときに、圧倒的な貧困を目の当たりにしました。それをきっかけに社会問題に関心を持ち、前職ユニセフではフィリピンのストリーチルドレンの教育支援に携わりましたが、格差社会を根本的に変えるには、社会に変革を起こす『チェンジメーカー』を育成する必要があると考えました」
小林さんは「世の中を変えるには、自分が育った環境とまったく違う環境で育った人たちと生活を共にし、他者理解をすることが大切」と考え、貧困や格差、宗教観や歴史観が異なるさまざまな環境で育った留学生を集め、真のダイバーシティーの環境を作りました。
「寮の自治は生徒に任せています。ある男子寮で汚れた食器がたまることが問題となり、全員が食器1枚に対し罰金10円払うルールにしたのですが、週に10枚、月合計40~50枚となると、金額が積み上がって払えない生徒が出てきた。実家の世帯年収が5万円の生徒にとって、500円は大金だったのです」
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