近年、タブレットやPCを活用した学びが、学校や家庭で注目されています。すでに取り入れている家庭も多い一方で、デジタル教育に対して漠然とした不安を抱いている親御さんも少なくありません。「AERA with Kids秋号」(朝日新聞出版)で、デジタル教育に詳しい、スタディサプリ教育AI研究所所長の小宮山利恵子さんに、効果的なデジタル学習の方法についてうかがいました。
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小宮山さんは、デジタル学習のメリットについてこう話します。
「最大のメリットは、一人ひとりの進度や理解度に合わせた習熟度学習ができることです。学校の授業では、子どもたちの学力レベルはまちまち。一人ひとりに寄り添って教えることは困難ですが、AIの力を使えば各学力に応じた課題を提示することが可能になります。つまずきを防ぐこともできますし、小さな“できた”を積み重ねることで、勉強に対する『意欲』と『継続』を促せます」
飽きにくいこともメリットの一つ。子どもはドリルなどの紙の教材には面白味を感じにくいものですが、タブレットを使うのは楽しいから好き。勉強のハードルを下げる側面も。
さらに、画像や音声などで多角的に学べるため、深く学習することができます。つまり、主体的な学びを促すツールとして最適なのです。
ところが、日本は世界で見るとまだデジタル教育後進国。アメリカや北欧の国などではWi-Fiが整備され、タブレット一人一台の学校が増えているなか、日本は環境の整備が遅れています。OECD(経済協力開発機構)「生徒の学習到達度調査(PISA)」2015から国立教育政策研究所が作成したデータによると、「世界各国の生徒用コンピューター1台あたりの生徒数」では、日本は調査国47カ国中34番目の3.96人となり、整備の遅れが浮き彫りになっています。
「今後は日本でもデジタル機器を用いた学習が当たり前になってくるでしょう。でも、これらはあくまでもツール。使うことが目的になってしまっては意味がないのです。さまざまなことがAIに代替される時代、本当に大切なのは人間にしかできない力を身につけることです。物事を考える、表現するといった創造力や『本物を見極める目』を得るには、手先を動かしたり、体を使ったりといった経験が大事になってきます。実際、デジタル教育先進国のエストニアでも工芸や体験学習などの五感を刺激する授業を大切にしています」
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