17の遺跡から、北海道・北東北全域の縄文時代の移り変わりがわかる。世界最古級の土器片が出土した大平山元遺跡(青森県)、縄文時代のイメージを変えた大規模集落跡で、多数の土偶が出土した三内丸山遺跡(青森県)、多くの土器などが出土した大湯環状列石(秋田県)など多彩である。
17遺跡が評価されたとはいえ、勧告は「不適切な構造物」の撤去などの注文をつけているので、課題は残る。
●それぞれの島で独自に進化貴重な生物多様性の地域
世界自然遺産には、鹿児島県の奄美大島と徳之島、沖縄県の沖縄島北部と西表島の4地域が登録された。
4地域は琉球列島(南西諸島)に属し、気候は亜熱帯。世界の亜熱帯地域の大半は降水量が少なく草原や砂漠になっているが、4地域は暖流の日本海流(黒潮)が流れ、梅雨や台風の影響で雨が多い。このため常緑広葉樹林の森が広がり、西表島と奄美大島にはマングローブ林が見られる。
琉球列島は約1200万年前はユーラシア大陸と陸続きだったが、その後の地殻変動や海面の変化により、大陸から切り離され、島々の分離・結合を繰り返し、現在の地形となった。
4地域は世界的にみても生物多様性が豊かな土地で、絶滅危惧種やその土地にしか生息しない固有種が多い。4地域は日本の国土面積の約0・5%だが、8758種の生物が確認されている。これは国内の生物の約23%に及ぶ。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに載っている日本の絶滅危惧種の約43%が4地域に集中している。4地域が生物多様性の観点からいかに重要な地域であるかがわかる。IUCNが登録を勧告した理由はここにある。
それでは、なぜこのような生物多様性が生まれたのか。島の成立や温暖多雨な気候などさまざまな要因が重なったからである。
例えば、アマミノクロウサギは大陸から分離した後、島に取り残された。大陸にいた同じ種は絶滅し、奄美大島と徳之島にだけ生息し、原始の姿をとどめている。耳が小さく、後ろ足が短いのが特徴。西表島だけにすむイリオモテヤマネコの祖先は、大陸由来のヤマネコで、島の自然環境に適応して生きぬいてきた。もともとは同種とされてきたが、それぞれの島で独自に進化した生き物もいる。アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミ、オキナワトゲネズミである。
4地域は、人の営みの近くにあるため、身近で希少な自然をどう守るかが、今後の課題だ。
(文教大学地域連携センター講師・早川明夫)
※月刊ジュニアエラ2021年8月号より