茂山 そうした話は、僕の塾でもよく耳にします。帰りに車中で話す、その時間が有意義で貴重だった、と。受験勉強が終わると、そうした時間もなくなるから、少し寂しい、と口にされる方もいらっしゃいます。ひとたび帰宅すると、リュックからノートやテストの結果が出てきて、どうしても目に入ってしまうので、勉強の内容や成績とは無関係でいられるお迎えの時間が大事なんでしょうね。
矢野 意外と子どもは塾帰りのご両親とのちょっとしたやり取りの時間を楽しみに、頑張れているというところもあるかもしれないですね。親と話をしたい子どもはやはり多いんですよ。両親が忙しければ忙しいほど、その時間が貴重になる。合間を縫って子どもと色々話をしてほしいと思いますし、子どもの表情を見て、話を聞いているうちに、そうしたやり取りがきっかけとなり、わが子の問題点が浮かび上がってきたり、志望校がおぼろげながら見えてきたりする可能性だってあるのではないか、と思っています。わが家は共働きだから、中学受験に不利ではないか……そんなふうに罪悪感、引け目を抱く必要は一切ありません。そういう環境だからこそ、わが子が中学受験の「当事者」として自覚させるように導けることだってあるのです。
(聞き手/AERA with Kids編集長・鈴木顕 構成/古谷ゆう子)
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しげやま・きりゅう/1986年生まれ。中学受験を経験し、大学附属校に入学。大学在学中から個別指導塾、大手進学塾などで中学受験指導に携わる。会社経営の傍ら、2011年、東京・西葛西に中学受験指導塾「應修会」を開校。自らも教壇に立って指導を行う。中学2年、小学6年の男子の父。X(旧Twitter)での中学受験についての発信も人気で、フォロワーは1万人を超える。X: @kiryushigeyama