「業者さんにお願いするパターンもあるのですが、先生が放課後に行うこともあり、手間もかかります。働き方改革を進めるなか、ほかの理由も含めて上履きナシの制度を見直す学校もあります」と市教委の担当者は話します。

 新設時や建て替え時に校舎を高層化して下駄箱スペースを確保し、外履きと内履きの二足制にする学校が増え始めた神戸市。上履きナシが増える都内の学校とは逆の流れです。

上履きナシ、衛生面を心配する声も

 上履きがない一足制のデメリットとして、衛生面を心配する声もあります。

 小学1年と4年の兄妹を育てる都内在住の男性(45)は、学校の廊下や床で転げ回る低学年を見て、上履きナシの流れに不安を覚えたといいます。「うちの学校はまだ上履きですが、近隣の小学校は一足制になりました。学区の通学路には不衛生な場所もあります。万が一、通学時に動物の糞を踏んでしまったとして、その靴で過ごすとなると、汚いを通り越して危険だと思いました」と打ち明けます。

 地域性や周囲の環境が影響する上履き問題。オフィスや店舗、病院など、現代の日本では一足制が常識となるなか、子どもの育ちにとっては何が最適でしょうか。改めて「二足制」の意義について議論することも必要そうです。

(取材・文/大楽眞衣子)

学校で全児童共通の上履き、実は足の成長によくない? 医師に聞く“上履き廃止”のメリット
著者 開く閉じる
大楽眞衣子
大楽眞衣子

ライター。全国紙記者を経てフリーランスに。地方で男子3人を育てながら培った保護者目線で、子育て、教育、女性の生き方をテーマに『AERA』など複数の媒体で執筆。共著に『知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド 親と子のギャップをうめる』(笠間書院、宮本さおり編著)がある。静岡県在住。

1 2 3