授業を終え、タクシーを待つ児童たち。辻教頭が「何時までアフタースクールにいるの?」とたずねると「5時!」「お迎えがくるまで!」。それぞれの回答が返ってきた=関東学院小提供

2023年秋、辻教頭は、市内のスタートアップ「hab(ハブ)」が、親の代わりに習い事へ子どもを送り届ける「相乗りタクシーサービス」の実証実験を行う、という情報を耳にします。

「わが校は対象エリアからは、少しはずれていたのですが、思い切って電話してみました。代表の豊田さんに事情を説明すると、“うちが車を出しましょう”と二つ返事でした。曜日によって微妙に変わる下校時間にも、柔軟に対応してくださることになったのです」(同)

 さっそく入学予定の新1年生の保護者に声をかけたところ、8家庭から利用希望がありました。現在は7人の1年生が、週5日このサービスを利用しているそうです。

乗客は子どもだけ 位置情報や社内の様子をリアルタイムで確認

 送迎を請け負うのは、市内を拠点とする地場のアサヒタクシー。特別な研修を受けた“子育て認定ドライバー”が、子どもたちをYMCAに送り届けます。

 約10分間の送迎中も、保護者は専用アプリを通して、車載カメラの画像をリアルタイムで確認できるようになっているそう。「今お子さんがどこにいるのか遠隔で確認できて安心だと思います」と辻教頭。送迎の料金は、利用児童の保護者と、学校が一部負担しているそうです。

 hab代表取締役社長の豊田洋平さんによると、この「こども専用相乗りタクシー送迎サービス」は2024年10月現在、横浜市内や都内を中心に約50人が利用しています。

「平日の放課後、習い事やアフタースクールへの送迎で悩むご家庭は少なくありません。特定の小学校との連携は初めてでしたが、お子さまの体調不良や、学校行事で下校時間が変わるとき、災害が起きたときなど、さまざまなケースに対応するために入念にすり合わせをしました」(豊田さん)

 豊田さんには、サービスを通じて、共働き家庭を支えたいという思いがあるそうです。

「私の母は、自身のキャリアややりたいことをあきらめて女手一つで私を育ててくれました。親御さんが、子どもの習い事送迎や家事に追われて正社員になれなかったり、短時間労働を強いられてしまったり、いわゆる“小1の壁”にぶつかって、仕事や自己実現に打ち込めない日本の社会を変えていきたい。いずれこのサービスを全国に広げていきたいです」

「地域の移動手段のハブをめざしたい」と語るhabの豊田洋平社長
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