もう一人も、学校での成績は良かったのですが、学校に足が向かない。自分でもその理由がわかっていないようでした。一人は中3の冬の時点で、もう一人は中学を卒業してから、通信制の学校に通うことを決めました。「通学」にこだわる必要はないのではないか、という考えもあったようです。

自分がやってみたいことを、自ら進んで「取りに行く」

――いま、二人はどんな毎日を送っているのでしょう。

 通信制の高校といっても、二人が選んだのは、自宅に留まりオンラインで授業に参加するのではなく、学校側が用意したフリースペースのような場所に通うタイプのコースで、日々課題をこなしているようです。課題の量は想像以上に多く、主体性を持ち、意欲的に取り組んでいかなければ到底終わらない。

 これは、僕自身が認識不足だったのですが、通信制の高校のなかには、自分がやらなければいけないこと、やってみたいことを自ら進んで取りにいかなければいけない仕組みになっているところもあります。「クラス」というものがない学校は、どこか大学のようですし、大人が学び直しをしているような感覚に近いのかもしれません。

――高校に進学して、二人はどうなりましたか。

 一人は、その代の卒業生のなかでも抜群に「大人」になったな、と感じます。課題に自ら積極的に取り組んでいる姿を見ると、「学校を変えてみて良かったんじゃないかな」と素直に思います。言動一つとっても、以前よりも対等に話せるようになった、と感じますし、僕自身の高校1年の頃と比べても、遥かに意欲的に勉強に取り組んでいると感じます。

 もう一人の生徒も、「ストップしていた時間を取り戻したい」と言って、英検などの外部試験にも積極的に挑んでいるようです。「このままダラダラするのではなく、自ら考えて環境を選んでいきたい」という意識が強いようです。

人生の道は、一本ではない

――“学び”のスタイルを変えてみたことで、人生が開けていったのですね。

 今後、「通信制の高校」は、より存在感を増していくのではないか、と感じましたし、親世代が抱くイメージとは明らかに異なる、ということも僕自身よくわかりました。親世代がマインドセットを変えていく必要がありますし、既存の学校は「通学するからこそ得られるものって何だろう」という大きな問いに向き合うことを余儀なくされる。そんなふうにも感じました。

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