第二次世界大戦後、日本は「二度と戦争をしない」と誓いました。日本が再び戦争をしないために必要なこととは? 小中学生向けのニュース誌「ジュニアエラ」(朝日新聞出版)が小学生200人におこなった戦争に関するアンケートで特に多かった質問に、軍事・安全保障にくわしい小泉悠さんが答えてくれました。「ジュニアエラ2024年7月号」らお届けします。

MENU Q.日本が戦争をしないために必要なことは? 日本が持つのは「拒否的抑止力」 Q.「日米安保」ってどういう条約? Q.日本は戦争を放棄したのに、なぜ軍事費を増やすの? Q.第3次世界大戦が起きないか不安です

Q.日本が戦争をしないために必要なことは?

 日本が戦争をしないために、最初にすべきことは「外交」です。さらに、どんどん貿易をして、お互いの経済が強く結びつけば、戦争もしにくくなるでしょう。

 しかし、相手がどうやっても話の通じないような独裁国家で、少数派の弾圧などをしていたらどうでしょうか。自分がやられないために、ひどいいじめっ子と仲よくすることは、はたしてよいことでしょうか? その意味で、外交は必ずしも万能ではありません。

 そこで「抑止」という考え方が出てきます。抑止力とは、相手を思いとどまらせる力のことです。抑止には「拒否的抑止」と「懲罰的抑止」の2種類があります。拒否的抑止は「キミが殴ってきても、全然効かないぞ」というもので、自分を守るための抑止です。懲罰的抑止は「キミが1発殴ってきたら、100発殴り返すぞ」というものです。抑止力の究極は核兵器で、これを「核の抑止」といいます。

日本が持つのは「拒否的抑止力」

 現在の日本が持っているのは拒否的抑止力です。核兵器はもちろん持たないし、他国に大きな害を与えるような武器は持たないというものです。例えば、北朝鮮からのミサイルを撃ち落とす、外国が無断で日本の島に上陸しようとしたら、その前に船を沈めるというのが日本の自衛隊の対策です。

 しかし、日本の周辺では中国やロシア、北朝鮮などが、核兵器というものすごく強い懲罰的抑止力を持っています。日本がこれらの国と一対一で向き合うとどうしても不利になる。 

 そこでアメリカという同盟国の存在があります。

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ジュニアエラ編集部
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