境界知能と思われる子は、1クラス35人なら約5人はいる計算に

高濱:境界知能かどうかは、どう判断するのですか。 

宮口:知能検査でIQを測ります。概してIQ値が70以上85未満であれば「境界知能」と判断されます。境界知能の人たちは統計学上、人口の約14%。1クラス35人なら5人弱はいるという計算ですね。けれども「障害」ではないので行政の支援の対象外になります。そのためこれまでは、少し課題のある普通の子として扱われるか、たとえ検査を受けても経過観察となって、十分な支援が受けられないことが多かった。

高濱:あの『ケーキの切れない非行少年たち』は、まさに気づかれないまま成長してしまったわけですね。

宮口:少年院には境界知能、または境界知能を伴った発達障害の子が多くいました。非行少年ではあるけれど、適切な時期に適切な支援を受けられなかった弱者と言える部分もある。基本的な認知能力が弱いため、丸いケーキを等分に切ることができない少年もいたのですから。私は医療少年院に勤務する前は児童精神科に勤めていましたが、彼らは病気ではないので病院には来ません。少年院に行って、初めてその存在に気づいたのです。

高濱:学校でも社会でも彼らは生きづらかった。境界知能だと、犯罪者としても不利なことが多いんですよね。

宮口:誤解されるならそうでしょう。たとえば境界知能の特性なのに、そういう解釈なしに「身勝手で短絡的な犯行」とされたり「反省の色がない」などと判断されたりする。IQ68と72の子の知能レベルはほとんど一緒なのに、IQ70という線引きによって72の子は厳しく裁かれてしまうことがあります。数値化の怖さですね。

高濱:対応を間違えてしまうというリスクは、学校や家庭でもありますね。

宮口:そうですね。勉強ができない、友達とうまくいかないという事態にしんどさを一番感じているのは本人です。でも親は、心配はしても「よくあること」ととらえようとしたり、「やる気がない」と叱ったり、あるいは「相手の気持ちになって考えて」と本人が頑張れないことを強いてしまうから、本人はますますつらくなる。

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