「大人が仕方なく家事をしている姿より、楽しそうに家事をする姿を見るほうが、子どものお手伝い欲を刺激します。そして、子どもといっしょに料理をしたり、掃除をしたり……。子どもが『おもしろそう』『やってみたい』と思えることを見つけて、継続してできるように仕向けましょう」
お手伝いより、もっと本を読んだり宿題をしたりと、勉強を大切にしてほしい……と感じることもあるかもしれません。
「親は、子どもの将来に備えて、つい勉強や経済的な面を重視しがちです。でも、身のまわりの整理整頓をしたり、食事作りや掃除洗濯をしたりといった生活的な作業ができてこそ、はじめて自立といえるのです。本当の自立ができるためにも、家の仕事を習慣にするのはとても重要なことなのです」
■お手伝いを日常に定着させる「順序」
(1)家の仕事を書き出す
家族で、家の仕事にはどんなことがあるのか書き出してみましょう。「朝、カーテンを開ける」といった、大人ならほぼ無意識で行っていることも仕事のひとつとしてリストアップ。「お皿を並べる」「お皿を洗う」……一日の流れを話し合いながら書くと、あっという間にものすごい数の家事が出てくるはず。こうやって実際に目で見ることで、お母さんやお父さんが家でどんなにたくさんの仕事をしているかを実感します。
(2)担当を決める
(1)でリストアップした家事の中から、「じゃあ、この中で自分ができそうなもの、やってみたいものをひとつでいいから選んでみよう」と声をかけます。このとき「お父さんも選んでみて」など、ほかの家族をまきこむのもおすすめ。自分の現状スキルよりも上のレベルのことをやりたがる子どももいるかもしれませんが、親が教えることを前提に、子どもの「やりたい」気持ちや好きなこと、興味を尊重するのがポイントです。
(3)教える
担当のお手伝いが決まって意外と忘れがちなのが、子どもにやり方をきちんと教えること。たとえば、雑巾も正しいしぼり方を知らないと、いつまでたってもうまく拭けないので子どもも楽しくありません。ぬらした新聞紙で窓を拭くとなぜきれいになるのか、畳に掃除機をかける場合はどうやるか……。家事にはちゃんと理由があります。それを教えてあげると、子どもも「なるほど」と、楽しくなってきます。
(4)一緒にやる
やり方を教えたら、子どもといっしょにやってみます。ここもつい省いて任せてしまいがちですが、「これくらいのことはできるでしょ」と思っている作業が、実はできないケースが多いものです。でも、それは経験がないから当たり前。実際にやってみて、試行錯誤をしながら体得するものなのです。「あー、もう、お母さんがやろうか?」と言いたくなりますが、これも成長の過程。「許容」することも大切と心得て。
(5)「よき終わり」で締める
継続のコツとして、活動の終わりに「やってよかった」という気持ちを持たせるのは効果大。できなかったことを指摘するのではなく、「隅っこまできれいだね!」など、子どもが「自分の仕事には意味があったんだ」と思えるようにします。認める、感謝の気持ちをことばで表す、応援する。子どものお手伝いにも、大人の家事労働に対しても言えること。家族が、お互いにこの気持ちを持つように心がけたいですね。
(取材・文/編集部)
※「AERA with Kids2022年夏号」(朝日新聞出版)より一部抜粋
朝日新聞出版