高濱 やっぱりタダものじゃない。

大宮 親に心配かけたくなくて、必死で考えました。おかんから人間の急所は「弁慶の泣き所(向こう脛ず ね)」だと聞いたので、あるとき意を決して、いじめっ子のドンの脛を思い切り蹴りました。そしたらドンが泣いた(笑)。

高濱 形勢逆転だね! 

大宮 あと、笑わせる作戦も。いじめられてもうつむいたら負けだと母に言われ、ならばとボケてみた。最初はうまくいかなかったけれど、ある日、相手が思わず笑ったんです。これだ!と(笑)。いじめてもボケるから相手はいじめがいがない。その後潮目が変わり、人気投票でクラス委員に選ばれました。

高濱 それからは、学校も楽しかった?

大宮 いや、人のウラオモテを見たせいで、今度は友達ができにくくなりました。

高濱 人を見る力がハンパないからね。

大宮 実はそれが脚本を書く力になったかもしれないです。

高濱 さっきお母さんの話が出たけれど、どんなお母さんでしたか?

大宮 いじめられていた時期は「あんたが悪いんちゃう」「つらかったら逃げてええ、引っ越そか」と言ってくれた。逃げ道があるから克服の道を考えられたしアイデアも出てきた。感謝しています。

高濱 すてきなお母さんじゃない!

大宮 いやいや、でも基本放置ですよ。うちは共働きで私は一人っ子、家ではいつもアニメを見て過ごしていました。今も覚えてるんだけど、家でキャンディー形チーズを何個も食べて、その紙くずが顔のまわりにちらばったまま私が眠ってしまった後、おかんが帰ってきて「きゃーエリーちゃん、可愛いわ~」って喜ぶんです。「は? 寂しかったんですけど!?」というのが通じない。

高濱 本当にかわいいと思ったんじゃないのかな。かわいそうじゃなくて。

(取材・文/篠原麻子)

※「AERA with Kids 2022年秋号」から一部抜粋

AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2022年 秋号 [雑誌]

朝日新聞出版

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篠原麻子
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