中学入試本番が近づいてきた。これから先、受験するかどうか迷っている家庭はもちろんのこと、受験を決めた家庭であっても、小学生時代の貴重な時間を「合格するための勉強」に費やすことに対して、少なからず葛藤があるだろう。非認知能力育児のパイオニアでライフコーチのボーク重子さんは、「受験はただそこにあるもの」と前置きしつつも、「中学受験にこそ非認知能力が大切で、親子が非認知能力を育む絶好のチャンス」だと話す。「AERA with Kids」で、なぜ受験に非認知能力が大切なのか、家庭で身につける方法をうかがった。

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 非認知能力とは、IQや従来の学力(認知能力)のように数値化できる能力ではない、「人間力」のこと。問題解決力、柔軟性、心の回復力、自制心、やり抜く力、共感力など。「生きる力」ともいわれており、欧米を中心に近年では日本でも子育てのトレンドとして注目を集めている。

 テストの点数や偏差値が重視されがちな中学受験と、非認知能力。相反するように思えるが、2018年に出版された『世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)以来、非認知能力育児の大切さを伝えているボークさんはこう話す。

「今日はこのページまで勉強するという最後までやり抜く力、疲れていてやりたくなくても先を見越して今やらなくてはと思える自制心……。受験にこそ非認知能力が必須なんです」

「自分はやればできる」という自己効力感も、受験期間なら育みやすいそうだ。ここで言う「できる」とは「テストで100点をとる」ことではない。テストの点数は他者の評価や当日の自分の体調などに左右され、自分では完全にコントロールできないからだ。ただ、「テストのために、今日この範囲まで問題を解いておく」といった行動を確実にするという意味での「できる」なら、自分でコントロールすることが可能だ。子ども自身が「自分で決めたことができた」経験を積んでいけば、「自分はやればできる」という気持ちを奮い立たせられるだろう。

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小林佳世
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