マスクをつけることがすっかり習慣になった今、実は口腔環境にとって心配なことが増えているといいます。「AERA with Kids冬号」では、歯学博士で「医療法人社団恒久会 江口歯科・矯正」院長の江口康久万(えぐち・やすくま)先生にお聞きました。
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近年、口腔環境と体の健康との関係が注目を集めています。
口腔環境というとシニア向けの話のようですが、実は子どもも同じ。
細菌やウイルスの侵入を防ぐ抗体は、血液中だけでなく唾液の中にも存在します。多くの抗体は、生まれてくるとき胎盤を通って血液に入りますが、唾液に含まれる抗体は初乳を口にすることで備わり、肺や腸にいきわたります。
ですから、口腔環境が整うと免疫細胞の7割が集まる腸内環境もよくなり、免疫力が上がるのです。
しかし、口内環境が乱れて虫歯菌や歯周病菌が増えると、抗体は口内の対処で手いっぱい。外からの細菌やウイルスへのブロックが手薄になり、感染症のリスクが高まってしまうのです。
常時マスクをしていて鼻を覆われていると口呼吸になりやすく、マスクを取ったときも口呼吸になり、外気が入ることで口内が乾燥しがちに。
「実際に、虫歯の子どもが増えています。健康な歯で食べ物をしっかりかみ砕くと、胃腸の消化を助け、免疫力のアップにつながります。子ども時代の歯の健康は、大人になっても影響するもの。親子で口腔ケアを見直しましょう」(江口先生)
以下は江口先生おすすめの、簡単にできる口腔ケアです。親子でやってみてはいかがでしょうか?
1.唾液をまわす舌まわし運動
口を閉じて、口の中で舌を左右に大きく数回、回します。舌を動かすことで唾液量がアップします。口腔機能が改善されて歯の生えるスペースが整ったり、口呼吸の改善にも役立つなどの効果も。続けるうちに、舌で歯の裏表を触ると、磨き残しのある状態がわかるようになります。
2.マスクを外したら、口をとじて鼻呼吸
口内をうるおすのは、鼻呼吸!鼻呼吸が苦手な子どもは、鼻に疾患があったり、歯並びの状態が悪かったりする場合もあります。早めに医師に相談しましょう。
3.こまめな水分補給で口内にうるおいを
空気が乾燥しがちな季節は、口内も乾燥します。水分補給は、虫歯の原因になる糖分を
含むジュースやスポーツ飲料は避けて、水やお茶がベスト。口内のうるおいを意識して。
(取材・文=三宅智佳)
※「AERA with Kids冬号」では他にも免疫力アップの方法をいろいろ紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
高濱正伸,宝槻泰伸,安浪京子