アメリカ大統領は、「アメリカ第一主義」を掲げ世界中に混乱を巻き起こしてきたトランプ米大統領から、バイデン新大統領に交代する。日米関係はどうなるのだろうか。小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」1月号では、朝日新聞論説委員が今後の日米関係について解説した。
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4年に1度のアメリカ(米)大統領選挙が2020年11月にあり、民主党のジョー・バイデン前副大統領(78)の当選が確実になった。共和党の現職、ドナルド・トランプ大統領(74)は再選を果たせず、年明け1月20日に大統領が交代する。
これを機に、日米関係も衣替えすることになる。安倍晋三前首相とトランプ大統領は、ゴルフや相撲観戦などを交えながら、親密な個人的関係を築いた。今度の菅義偉首相とバイデン次期大統領は、より実務的な関係になるかもしれない。
2016年の「予測不能」なトランプ大統領の当選は、日本政府をあわてさせた。そこで、世界の首脳に先駆けてニューヨークのトランプ・タワーを訪ね、仲良くなって取り込もうとしたのが安倍前首相だ。
それでも、実業家出身で、同盟関係に金銭取引を持ち込むトランプ大統領は、日本にいるアメリカ軍の経費負担を大幅に増やすよう、日本側に求めてきた。アメリカ製の兵器も買うよう要求し、戦闘機などを大量に買い込むことになった。
「アメリカ第一主義」のトランプ大統領は、経済活動を自由にする環太平洋経済連携協定(TPP)からも離脱した。このため日本が主導し、アメリカ抜きの11カ国で合意をまとめるしかなかった。
トランプ大統領に比べ、オバマ政権で副大統領を務めたバイデン次期大統領は、かなりの程度、「予測可能」だ。上院外交委員長を経験した政策通で同盟関係を重視しており、地球温暖化問題でもアメリカを「国際協調路線」に戻すとみられている。
とはいえ、アメリカと中国の対立は楽観できない。日本はアメリカとの関係を基軸としながら、自由で開かれたインド太平洋に向けて、欧州やオーストラリア、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)などと連携することが課題となる。
アメリカを頼ればすむ時代ではない。日本が地域のあり方を構想し、仲間を広げる努力が必要だろう。
【自由で開かれたインド太平洋】
法の支配や航行の自由、自由貿易などの価値観を共有する国々との連携を広げ、インド太平洋地域の繁栄と安定をはかる構想。中国が巨大経済圏構想「一帯一路」を打ち出し、巨額のインフラ投資などで影響力を強めていることを念頭に置いている。安倍前首相が2016年に発表し、菅政権も引き継いでいる。
(朝日新聞論説委員・小村田義之)
※月刊ジュニアエラ 2021年1月号より