安宅 日本は、データ×AIという時代のドライバーとなる分野では驚くほど出遅れてしまいました。核となる変化を生み出していないし、追いついてもいない。非マシーン的な人材が鍵なのにいまだに教育も社会も、マシーン的人間の育成を重視しています。小学校もそうでしょう。いまも漢字の書き取りや計算ドリルのために時間をたくさん割いている。これって日本だけまったく別の武器で戦っているようなものですよ。竹やりを持って訓練しているのと一緒。

高濱 安宅さんは、今の時代に必要な武器とは何だと思いますか。

安宅 まずは母国語と世界語の習得です。自分でものを考えて伝えるために必須ですから。そのうえで、豊富な実体験に基づいた課題設定能力と解決力。もちろんデータ×AIをきちんと理解し駆使できる能力も必要でしょう。でもそれらはあくまでも武器です。小学校時代に身につけてほしいのは、スキル以前の、人間的マインドですね。

高濱 マシーン的マインドにならないための。

安宅 はい。そもそも僕は、「気をつけ!」「前ならえ!」「休め!」が破壊的に良くないと思う。あれは軍隊の教練です。あれがマシーン的マインドをつくっている。ここにすごく危機感を覚える。

高濱 集団的規律を守り、みんなが一緒に動くことを良しとする象徴的なものですね。

高濱 髪形を指定する校則なんてその最たるものでしょ。互いの違いを認めず、同じであることを強制してくるんですから。すべてをベターッと同じように塗りつぶすという発想。

高濱 逆なんですよ、重きを置くところが。自分は他の人といかに違うかということに一番の価値があるのに。

安宅 まったくです。自分らしさというのは、結局のところ、「違い」なんです。違いからしか価値は生まれないし、変化も起きない。他の人とは違う自分だけの「意志」や「感情」とは何か、親も子も、そこを大切にしないと。それが、その子なりの「心のベクトル」になりますから。

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