村田:うーん、実はモチベーションがマックスになったから復帰したとか、リベンジできたというわけではないんです。最初は、このままではイヤだという弱い火がチロチロと。そこから奮起し勝てるようになるまでには、父や子どもの言葉、心理学の本、そんなあれこれをエネルギーにして、自分で少しずつ薪をくべて炎を大きくしていった感じです。

高濱:なるほど。たとえば先の恩師のメッセージも、拳で一生生きていこうと決心する薪になったわけですね。

村田:はい。言われたときは、あれ、怒られなかったラッキー、とかそんな程度でした(笑)。でもあの言葉はそれ以降もモヤッとずっと心に残っていて。

高濱:大切なメッセージを受信できるか否かは受け取る本人次第ですからね。

村田:確かに。僕も、経験上確信しているんですけど、何かあったときにやめる人間と、歯をくいしばって続ける人間の差って、やはり「自分で決めてこの道に入ってきたかどうか」だと思うんです。人から言われても、自分自身で納得できなければ続かない。実際、才能があってもプロになりきれずにやめてしまったり、ボクシングで手に入るわずかなファイトマネーより、バイトで稼げる金に気持ちをシフトしていってしまう人も多いんですよ。僕だって、相当しんどい思いをしてタフな練習を続けてきたから、ようやくここまできた。今だって毎日不安だし、試合前のプレッシャーは相当です。でも、これが自分の生きる道だと自分で選んだから、それに耐えられるんです。

高濱:勉強でもビジネスでも通じるものがありますね。結局はモチベーションの炎を自分自身で大きくできるかどうか、なのかもしれないですね。

村田:どの世界も同じですね。

(構成・文/篠原麻子 撮影/写真部・小黒冴夏)

AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2019年 冬号 [雑誌]

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AERA編集部
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