国内の政治や外交の問題は山積みなのに、国会から「議論が消えた」と言われたのはなぜか。 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説する、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』8月号は、7月21日の参議院議員選挙(参院選)で問われるべきことを解説した。

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 いったい何が問われているのか、よくわからない─―。参議院議員選挙に、そんな思いを抱いている人も多いのではないか。通常国会での議論が盛り上がらず、政治の課題や与党と野党の対立軸が見えにくかったことが、その原因の一つなのは間違いない。

 与野党論戦の主舞台で、首相が出席することも多い予算委員会の開催日数は、過去10年の通常国会で最も少なかった。野党は繰り返し開催を求めたが、与党が無視したのだ。首相と野党党首との党首討論も、6月中旬にあった一度きりだった。

 不透明な経済の先行き、老後の暮らしへの不安や年金のあり方の問題、行政への信頼をおとしめた森友・加計学園の問題……。問題はたくさんあるのに、安倍晋三首相が進んで説明責任を果たそうとする姿勢は見られなかった。

 一方で、安倍政権の幹部たちは、参院選にあわせて衆議院を解散する衆参同日選に踏み切る可能性をちらつかせ続けた。議員はこの「解散風」に浮足立ち、審議に集中できない様子もうかがえた。

 議論を最低限に抑え、野党に見せ場を与えない。「議論なき国会」の背景に、そんな政権・与党の思惑があったのは明らかだ。

 政権が国会の外で力を注いだのが、国のトップ同士の首脳外交だ。

 新天皇陛下と最初に会見する外国首脳としてトランプ米大統領を迎えるなど、3カ月連続で日米首脳会談を行って親密ぶりを強調。6月下旬に大阪で開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議にあわせ、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領らとも会談し、「外交の安倍」をアピールした。

 だが、肝心の外交交渉の行方は霧の中だ。

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AERA編集部
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