毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説する、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』7月号は、「AIと未来社会」を特集。AIが進歩すると社会はどうなるのか。私たちはどう生きればいいのか。AIの専門家で東京農工大学客員教授の藤本浩司さんに、ジュニアエラのキャラクターコビンがきいた。

*  *  *

コビン:AIがなんでもできるようになったら、人間のすることはなくなってしまうのかな?

藤本:そんなことはないよ。AIは「魔法の杖」ではないからね。人間のように「自分で考えて環境に対応し、よりよい成果を達成する」には、四つの力が必要なんだ。

コビン:四つの力って、どんなこと?

藤本:(1)動機(解くべき課題を見つける)、(2)目標設計(めざすゴールを決める)、(3)思考集中(考えるべきことをとらえる)、(4)発見(ゴールにつながる要素を見つける)、この四つ。このうち、今のAIができるのは、 基本的に(4)の「発見」だけなんだよ。

コビン:エッ!? AIはもっといろいろなことができると思ったのに……。

藤本:解決したい課題がある。ところが、やればやるほど新たに課題は出てくる。でも、それらの課題をAIが見つけてくれるわけではない。何をしなければならないかは、人間が考える必要があるんだよ。

コビン:でも、「AIの利用が広がると、仕事の半分はなくなる」と聞いたことがあるよ。

藤本:たしかに、今ある仕事の中で、なくなるものはあるよ。でも、仕事のほとんどがなくなるわけではない。人間の歴史の中で、産業革命といわれるものが過去に3回あった。その度に、「仕事がなくなる」と心配されたけど、今も多くの人が働いているよね。

コビン:そういえば、そうだね。

藤本:イギリスで18世紀に起きた第1次産業革命では、織物を作る紡績機が発明された。そのとき、「自分たちの仕事がなくなる」と機械をハンマーでたたき壊すような反対運動もあったよ。でも、ほぼ同時期に蒸気機関が改良されると、工場が機械化されて、人々は肉体労働から解放された。この変化を人々は受け入れ、働き方も変わってきたんだよ。

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AERA編集部
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