日本はすでに「移民社会」なのに… 「移民政策ではない」と政府が言い張る理由 (2/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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日本はすでに「移民社会」なのに… 「移民政策ではない」と政府が言い張る理由

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造船所で働くタイ人の技能実習生(広島県) (c)朝日新聞社

造船所で働くタイ人の技能実習生(広島県) (c)朝日新聞社

工事機材の準備をするベトナム人の技能実習生(神奈川県) (c)朝日新聞社

工事機材の準備をするベトナム人の技能実習生(神奈川県) (c)朝日新聞社

建設現場で日本人の作業員(左)から指導を受けるベトナム人の技能実習生(神奈川県) (c)朝日新聞社

建設現場で日本人の作業員(左)から指導を受けるベトナム人の技能実習生(神奈川県) (c)朝日新聞社

メロン農家で働くフィリピン人の技能実習生(愛知県) (c)朝日新聞社

メロン農家で働くフィリピン人の技能実習生(愛知県) (c)朝日新聞社

 というのも、日本より先に多くの移民を受け入れてきた国々で、この受け入れ策に失敗している例が多いからだ。言葉がわからずに周囲から孤立したり、収入の低い仕事しかできずに貧困に苦しんだりする人が増えると、治安の悪化や社会保障コストの増大などを招きかねない。人々の不安が高まり、移民を追い出そうという主張をする政治家が現れて、政治が混乱する例も少なくない。

 こんな移民受け入れの難しさを意識しているのか、日本政府はこれまで一貫して「移民政策」はとらないと言い続けてきた。「入管法改正案を移民政策と言いたくない理由はあるのか」と参議院で野党の追及を受けた安倍晋三首相は、「期限を付して、限られた業種に限定的に外国人を受け入れるので、いわゆる移民政策ではない」とはっきり答えた。

 だが、国際的な移民の定義に照らせば、日本に長く住み続けている外国人はすでに「移民」と言ってもおかしくはない。在留外国人は2017年末の時点で約256万人に上り、年々増加している。こんな現状について、移民問題の専門家である鈴木江理子・国士舘大学教授は「日本はすでに、結果としての移民社会となっている」と話す。

 新たに入国する外国人の数でも、日本はすでに欧米諸国と肩を並べている。「移民政策はとらない」という政府の説明は、言葉で現実をごまかしているだけのように聞こえる。

「我々は労働力を呼んだ。だが、やってきたのは人間だった」。移民国家スイスの作家マックス・フリッシュの言葉だ。外国から日本に来る人たちを、血の通う生身の人間として社会に迎え入れる覚悟がなければ、諸外国と同じ失敗を繰り返すことになる。(解説/朝日新聞編集委員・真鍋弘樹)

【改正入管法の問題点】
(1)具体的な中身が詰められていない
(2)日本で暮らす外国人を社会に受け入れる方策が不十分

【キーワード:改正出入国管理法(改正入管法)】
 改正法では人手が足りない産業分野に限り、事実上の単純労働に就く外国人が日本に住むことを認める。介護や建設など14業種を検討の対象とし、5年間で最大約34万5千人の受け入れを見込む。新しい在留資格は技能レベルによって「1号」「2号」があるが、1号は家族の帯同は認められず、在留期間は通算5年に限られる。

【キーワード:外国人技能実習制度】
 外国人が働きながら日本の技能を学ぶ制度。職種は、機械や繊維、農業、漁業など70以上あり、2017年11月に介護が加わった。目的は技能を母国に持ち帰ることだが、人手不足の日本の会社は実際には安い労働力として頼り、問題となっている。

【キーワード:移民】
 それまで住んでいた国からほかの国に移り、長期にわたって住む人々のこと。定義は国や国際機関によって異なる。国連は「1年以上外国に居住する人」、経済協力開発機構(OECD)は「上限の定めなく更新可能な在留資格を持つ人」としている。また、アメリカなどは「永住権」や「市民権」を持つ外国人を移民と定義している。

※月刊ジュニアエラ 2019年2月号より


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