●働きたい主婦の受け皿

「待機児童解消に向けた、シンボル事業にしたい」

 小池百合子東京都知事が開設にあたってそう意気込みを語った「とちょう保育園」。16年10月に都議会議事堂の1階にオープンした。企業主導型保育事業と並行して政府が推進する「地域型保育事業」の企業内保育所で、企業主導型との大きな違いは、認可保育所であることと、地域住民のための「地域枠」が義務づけられていることだ。

 とちょう保育園の対象は0~2歳で、定員は48人。半分の24人は新宿区民枠で、残りを都職員と近隣企業の社員で分け合っている。新宿に本社を置く日本ロレアルも提携企業。昨年7月に出産し、産後4カ月で復帰した太田典子さん(44)は言う。

「認可外保育所しか子どもを預けられるところがなかった。保育料も月に20万円もかかって大変でした。それが3分の1になって助かりました」

 後藤祥代さん(31)は、通勤ラッシュを避けて毎朝7時過ぎに登園。後藤さんのような親子向けに有料で提供される朝食サービスを利用している。

「第7希望だった地元の認可保育所にも入れましたが、家から遠くて。通勤途中に送り迎えできるとちょう保育園にしました。災害などがあってもすぐに迎えに行けて安心」(後藤さん)

 延長保育は夜10時まで。一時保育枠もあって、都庁来庁者の子どもも利用できる。看護師も常駐していて、登園後に体調を崩した場合は必要に応じて、ライブカメラで医師のアドバイスを受ける態勢も整っている。

 第1子出産後、女性の約5割が離職する。いったん仕事を失うと保育所への入所は難しく、保育所に子どもを預けられないことには再就職もできない。そうした「二重苦」に苦しむ女性たちの受け皿となって急拡大中なのが、仕事と託児の両方をセットで提供するママスクエアだ。

 京王八王子ショッピングセンター内にも今年4月にオープン。メーカーのコールセンター業務を代行している。働く親たちからは、ガラス越しにキッズスペースで遊ぶ子どもたちの様子が見える。専任のキッズサポートスタッフがいるが、おむつ替えや食事の世話は親がする。

1 2 3 4 5