中学の教員免許を取ったのですが、ちょっと物足りない。そこで高校の採用試験を受けました。高校ではいろいろな材料を使いながら、授業をするのが楽しかったですね。これでもか、というほど「理科は面白いよ」と生徒に伝えました。

 ただ、私1人だと担当した生徒だけにしか理科の面白さを伝えられない。もっと大勢の子どもたちに伝えるために、私と同じような考えを持ってくれる先生を育てればいいと気が付いたんです。

 そこで管理職の試験を受け、埼玉県立総合教育センターの指導主事になりました。私が研修を担当した先生のなかには、スーパーサイエンスハイスクールの指定校で理科を教えている先生もいる。1人でできることは限られていますが、次世代の先生方が活躍している姿を見ると、頼もしいです。

■女子校は女子の特性を生かした理系教育ができる

――川越女子高校では、高2での文理選択をやめ、高2までは数学をしっかりやる、としたのですよね。

 川越女子高校には教頭として赴任しました。生徒は能力が高く、やる気がある。この生徒たちが、理科や数学ができない、興味がないからといって選択肢を狭めるのは、実にもったいないと思ったんです。

「好きな子はどんどんやりましょう、そうでない子もやりましょう」と、女子生徒の選択肢を広げるためには、 理系の勉強をあきらめないことだと生徒に語り続けました。その時代の子たちも30歳を過ぎて、いろいろな方面でがんばっています。

――世の中にはまだ、女子は理系が弱いという偏見があります。女子校にできることはありますか。

 女子の選択の幅を狭めているのは数学や理科です。でも、女子は苦手と思い込んでいるだけ。中高の数学や理科は、コツコツやればできるんです。

 鴎友学園女子中高の吉野明・前校長が、「女子校は、女子の特性に合わせた理数教育ができる」とおっしゃっていましたが、本当にその通りだと思います。

 女の子のコツコツやる特性は、実は研究向き。アイデアや発想は男子が勝っているといわれますが、そんなことはありません。研究を続けていれば、新しい着眼点が出てきます。何もないところから、発見はできません。

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