多様な入試を行い「日本一入試の種類が多い学校」を標榜する理由について、富士校長は次のように話す。

「3年間塾通いしなければ受験できないような、今の私立受験の有り様は疑問です。小学生にとっては、塾以外の学びも大事。4科にたけた優等生だけを取る必要はなく、いろいろな生徒に来てほしい」

 入試の種類にかかわらず、生徒の入学後の学力にはほとんど差がないという。

 光塩女子学院(東京都杉並区)は、10年から第2回入試に、選択肢のひとつとして「総合型」を導入。16年度からは独立した入試として2月1日の第1回目に配置した。国語基礎、算数基礎と総合問題で構成されている。作問は担当の教員が、OECD(経済協力開発機構)のPISA(学習到達度調査)や公立中高一貫校の適性検査の問題を参考に、同校独自のスタイルを作り上げたという。導入の狙いを佐野摩美校長は次のように話す。

「知識だけでなく、文章や図表の読解、ロジカルシンキング、自己表現がきちんとできているかどうかも見ていこうと始めました。この入試で入ってきた生徒は、活発でいろいろなことに興味を持ち、豊かな発言も多い。こつこつと努力して入学した生徒と化学反応を起こし、お互いに良い影響を及ぼしています」

 総合型入試で入ってくる生徒は伸びしろがあり、次第に力を発揮して上位に上がってくることも多いという。

 20年度からの小学校での英語教科化を受けて、入試に英語を導入する学校も増えている。首都圏では、昨年の141校から、今年は143校に増加した。江戸川学園取手(茨城県取手市)は22年からすべての入試を5教科(国・算・社・理・英)にすると発表。

「小学校の学習範囲内でそれほど難しくはないとしていますが、全入試に英語を入れるのは、おそらく日本で初めてでしょう。英語教育に力を入れていくというアピールだと思います」(北さん)

 広がりを見せる中学入試。北さんは「将来的には、中学入試市場の半分を新タイプ入試が占めるようになるのではないか」と話している。

(文/柿崎明子)

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ライター 柿崎明子

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