【Vol.02】高等教育の明日を提言 格差是正と「学修者本位」教育による改革を |AERA dot. (アエラドット)

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少子化が進み、「大学全入時代」とも言われる今日、あらためて高等教育のあり方が問われています。リベラルアーツの真価や、学生が主体となる「学修者本位」教育への転換、教育格差の是正について語るのは、小林雅之教授。日本の大学が抱える課題を提起します(聞き手:桜美林大学 畑山浩昭学長)。

【Vol.02】高等教育の明日を提言 格差是正と「学修者本位」教育による改革を


揺らぐ教育への信頼
日本の大学はいま

畑山:小林先生の研究のキーワードは「高等教育政策」。いま、どんな事象に関心をお持ちですか。

小林:懸念しているのは「大学に対する社会の信頼が落ちている」ということ。大学の数が増え、定員割れし、倒産するところも出てくるのではと言われ、社会が大学を見る目は非常に厳しいというのに、大学側はのんびりしているんです。教員のなかには、昔のままのイメージで「学生は自分で勉強するもの。教師の背中を見て育て」という考えがまだまだ残っている。それに対して学生は、積極的に勉強する人もいれば、「指示待ち」の人もいる。さらに、これからは社会人や留学生も増えるでしょうし、多様化していく学生に大学が充分に対応できているか、疑問です。

一方で、国の政策も不十分です。私は文部科学省や国立大学協会の委員などを務めてきましたが、国は財政が悪く、教育にカネを使えない。国立大学は運営費交付金を毎年1%ずつ減らされています。私学助成の絶対枠は増えていますが、大学収入に占める相対的な比率は下がっています。そんななかで、国が時々に思いついたように助成テーマをつくり、カネを出すやり方は、なんとも中途半端。もっと体系立てて計画する必要があると考えます。

いまこそ求められるリベラルアーツと
「学修者本位」教育への転換



畑山:大学の「中身」のつくり方についてお伺いしましょう。桜美林大学は2007年からリベラルアーツ学群を設置しています。一時期、他大学では「国際教養」などの学部・学科が流行りましたが、最近は「リベラルアーツ」という言葉を冠するところが増えてきました。小林先生は、リベラルアーツ教育に関してはどんな考えをお持ちですか。

小林:欧州ではリベラルアーツは中等教育で終わっています。米国では大学がリベラルアーツを担い、リベラルアーツ専門のカレッジもあります。日本では戦前、旧制高校でそれに近い教育を行っていました。ところが戦後改革によって、旧制高校(3年)と旧制大学(3年)で計6年かけて行われた教育を新制大学の4年に詰め込むという、カリキュラム上とても無理なことをやっているんです。それから特に1990年代から約30年間、一般教養が衰退してしまい、「さすがにまずいだろう」と。理系でいえば、研究者の倫理や視野の広さといったものが失われることへの懸念が強まっています。いまこそ、リベラルアーツが必要だと感じますね。

同時に、大学教育全般に求められるのが、学生たちが「何を学び、身に付けることができるのか」を明確に示し、その成果を実感できるようにした「学修者本位」のシステムへの転換。大学や教員の都合でカリキュラムをつくるのではなく、学生側からの視点に転換しなければいけない。中央教育審議会が2018年にまとめた答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」では、初めてこのことが明確に打ち出されました。

教育格差を是正し
負の循環を断ち切る


畑山:小林先生は学生たちの教育の機会、教育格差について研究を続けていますね。18歳人口が減り、大学進学率が上がるなか、格差はどうなっていくのでしょうか。

小林:教育格差は社会・経済的な格差と繋がり、負の循環構造を生み出しますから、どこかで断ち切らないといけません。格差を縮小する策として、米国は給付奨学金に力を入れています。これは国際的な流れですが、日本の場合は非常に遅れている。やっと少しだけ前進したところです。

2020年4月から始まる授業料減免措置は、年収380万円以下の低所得世帯の学生にかかる授業料を国が補助するというもの。すると、これまでの制度で授業料を減免されていた中所得世帯の学生は新たな所得条件を満たせず、措置の対象外となってしまうという問題が生じました。そこで文科省は、これまで対象となっていた国公立大の学生が引き続き支援を受けられるよう、予算案に約53億円を盛り込みました。しかし、私立大にはその予算を付けていない。私立大はこの事態にもっと怒らないといけないと思うんです。信頼の落ちている一因には「大学が発言しないこと」も挙げられると思います。

畑山:大学から社会への発信や、学内外への説明責任がより一層重要になってくるでしょうね。さて、先生は2019年に桜美林に来られましたが、どのような印象をお持ちですか。

小林:2019年にできた新宿キャンパスと、既存の町田キャンパスとの連携をどう活かすかという点に期待しています。せっかく新しくキャンパスをつくったのだから、新しい考え方をどんどん持ち込んだほうが良い。先ほども述べましたが、学生たちにどんなスキルが身に付くのか打ち出して、それに応じたカリキュラムをつくるべきです。

畑山:「学修者本位」にするために、これまでの概念をひっくり返して考えなければ。「大学づくりを変えること」こそ、桜美林が目指す道との思いを新たにしました。

小林雅之

桜美林大学 総合研究機構 教授

1976年、東京大学教育学部卒業。1982年、東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学。広島修道大学人文学部助教授、放送大学教養学部助教授、東京大学大学総合教育研究センター助教授、同教授を経て、2019年4月から現職。日本高等教育学会会長、あしなが育英会理事、文部科学省中央教育審議会臨時委員などを歴任。主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「大学評価」「大学経営」「学費」。著書に『進学格差―深刻化する教育費負担』(筑摩書房)など多数

文:加賀直樹 写真:今村拓馬

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