いよいよ告示された東京都議会議員選挙。小池百合子都知事は政権を脅かす存在に化けるのか? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞編集委員・藤生明さんの解説を紹介しよう。

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 東京都議会議員選挙(都議選)が6月23日に告示、7月2日に投開票される。選ぶのは約1千万人の都民、選ばれるのは127人の議員たちだが、焦点は小池百合子都知事の与党が、都政で対立する都議会自民党など野党にどんな戦いぶりを見せるか、だ。勝ちっぷり次第では、小池氏は国政を揺るがす存在に「化ける」かもしれない。

「何かイメージ操作が行われているような……」。5月11日、首相官邸を訪ねた小池氏は安倍晋三首相との会談後、困惑した表情で記者団にそう語った。2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックの経費負担をめぐり、東京都と、東京以外の競技開催地(神奈川・千葉・埼玉県)とが一時対立。外から見ると、首相官邸が仲介に乗り出したかのような形の中での首相訪問となったことに、小池氏は納得がいかなかったのだ。

 小池氏は翌日の定例会見でも、首相との面会は前もって決まっていたこと、と強調した。だが、首相官邸側には「小池知事側の得点は何としても避けたい」という強い思いがあったようだ。6月1日、小池氏は自民党に離党届けを出し、自ら立ち上げた地域政党「都民ファーストの会」の代表に就任。現下の最大の敵である自民党に対抗するため、公明党、民進党の離党組などと連携。首都東京で、安倍氏が総裁の自民党は小池人気の前に苦戦する選挙区も少なくなさそうだ。これで小池氏側が都議選で大勝ちしようものなら、影響は都政にとどまらないはずだ。国政を突き上げ、政権を脅かす存在になるかもしれない。

■首相になれなかった石原慎太郎

 それは歴史が証明している。1960、70年代には、公害対策や福祉政策で国の施策をもリードした革新系の美濃部亮吉都知事。最近ならば、人気作家出身の石原慎太郎都知事だ。石原氏は環境庁長官、運輸大臣を歴任し、89年の自民党総裁選挙に挑みはしたものの最下位で落選。95年には政界を一度は引退している。ところが、99年に都知事に当選すると、強いリーダーシップを期待する時代の空気とうまく共振して、「望ましいリーダー像」の常連に名前が挙がるほど、政治家石原慎太郎は「大化け」した。

 石原氏は最も注目され、年齢的にも比較的若かった知事1期目から2期目、国政には支持率の高い小泉純一郎首相がいて、国政復帰を求める周囲の「みこし」には乗らずじまい。結局、復帰は2012年、すでに80歳を過ぎていた。小池氏は現在64歳。都議選は小池都政の今後を占う試金石であることはもちろん、政治家人生をかけた大一番になりそうだ。(解説/朝日新聞編集委員・藤生明)

【国政を突き上げた歴代都知事】

<美濃部亮吉>
テレビ番組の解説で人気を呼んだ経済学者で、1967年、63歳で都知事に初当選。退任後は参議院議員に。84年没。

<石原慎太郎>
大学在学中に「太陽の季節」で芥川賞受賞。環境庁長官・運輸大臣(ともに当時)を務め、1999年、66歳で都知事に初当選。

※月刊ジュニアエラ 2017年7月号より

ジュニアエラ 2017年 07 月号 [雑誌]

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藤生明
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