子どもに本を“読ませよう”とすればするほど、読書体験に苦手意識をもってしまうかも……。「教えない教え方」で話題の異色の研究者・篠原信さんに、子どもが自ら本を読みたくなるヒントを教えてもらいました。『AERA with Kids 2024年春号』(朝日新聞出版)からお届けします。
【写真】『ねないこだれだ』せなけいこさんの原画や本棚はこちら子どもは親に教えられるより、教えたい!
小学生の娘と息子がいますが、本の勧め方は本当に難しい。僕も失敗したことがあります。息子が「名探偵コナン」のエピソードをきっかけに『三国志』に興味をもったとき、僕が熱く語っちゃったんですよ。そしたら興味が冷めて、もう『三国志』を読む気がしなくなったみたい。ほかにも、「お父さんが子どものころ大好きだったんだ」と言って渡した図鑑は読んでくれません(笑)。
子どもは親が先に内容を知っていると思うと、つまらなくなることがあるようです。親に教えられるより、教えたいんですよね。「面白そうだけど、どうだろう」と言って渡したり、聞き役にまわったりしたほうが、関心をもってくれることがあります。
本に興味を持つ上で一番大切なことは、子ども自身が「知りたい!」と思うことです。そのためには豊かな体験が必要ですが、ただ親がやらせたい「体験」を押しつけるのではあまり意味がありません。
例えば、キャンプで火をおこそうとして結果的に親のほうが熱中するより、100円ショップで見つけた火打ち石を「やってみる?」と子どもに渡してみる。わが家では、実際に子どもたちが2時間ほど格闘して火をおこしたので、びっくりしました。親は極力教えず、子ども自らが試行錯誤できると、「経験」として蓄積されます。その経験は自然と「知識」を求めるアンテナになり、新しい本との出合いにもつながるはずです。
いつも夫婦で、どうやって子どもたちの「楽しい」をデザインするか、話し合っています。本も体験も、「楽しい!」「知りたい!」が入り口にあれば、どんどんのめりこむ。「楽しいから」読む本と出合える機会をたくさんつくりたいと思っています。
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