「私たちはもはや世界の警察官ではない」大統領選挙ではそう語っていたトランプ氏。しかし、シリアへの攻撃や北朝鮮への圧力など、外交政策で大きな動きを見せている。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞GLOBE副編集長・大島隆さんの解説を紹介しよう。

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 アメリカのトランプ大統領が就任してから150日が過ぎようとしている。大統領選挙の間、「アメリカ・ファースト(米国第一)」を掲げていたトランプ氏だが、実際に大統領になってから、アメリカの外交政策はどう変わったのだろうか。

 1月に発足したトランプ政権が、対外政策で取った最初の大きな行動が、シリアへのミサイル攻撃だ。

 内戦が続くシリアでは4月、サリンとみられる化学兵器が反体制派の拠点で使われ、多数の市民が死傷した。

 これに対してトランプ氏は、アサド政権が化学兵器を使用したと非難。制裁のための攻撃を指示して、米軍が巡航ミサイル「トマホーク」を、地中海に展開していた駆逐艦からシリアの空軍基地に向けて発射した。

 外国のことよりも自国の利益や国内問題への取り組みを優先する「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ氏は、大統領選挙のときには「私たちはもはや世界の警察官ではない」と発言したこともあった。このため、「世界の秩序を守るという、これまでアメリカが果たしてきた役割を軽視するのではないか」と心配する声もあった。

 トランプ氏は攻撃を発表したとき、「罪のない市民を化学兵器で殺害した」と人道的な観点から問題にしただけでなく、「破壊的な化学兵器の拡散と使用を防ぐことは、アメリカの安全保障にとって不可欠な利益だ」と話して、「アメリカ・ファースト」とも矛盾しないという考え方を示した。

 このトランプ政権の決断を、日本の安倍晋三首相は「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとのアメリカ政府の決意を、日本政府は支持する」と語った。

 ただ、米国がシリアへ攻撃をしたのは一回だけで、その後も内戦が続く状況に変わりはない。かといって本格的にシリアの内戦に軍事介入をすれば、トランプ氏の「アメリカ・ファースト」を支持する国民は、反発する可能性がある。

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大島隆
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