宅配業者大手のヤマト運輸が、配送料の値上げや、取り扱う荷物の個数を抑えて労働環境改善に取り組むなど、宅配業界が危機的状況にあるという。どうすればいいのだろうか? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞経済部・内藤尚志さんの解説を紹介しよう。
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「アマゾン」や「楽天」は、パソコンやスマートフォンで買い物ができて便利だ。ネット通販と呼ばれ、みんなが使うようになった。でも、それで困っているのが宅配便の会社だ。買ったものを家まで届けてくれる「宅配ドライバー」の人たちが忙しくなりすぎて、きちんと休み時間をとれなくなっているからだ。
日本で2016年に運ばれた宅配便の荷物は、約38億7千万個。5年前より5億個以上も増えた。多くがネット通販の荷物だとみられている。しかもドライバーは荷物を渡すまで、何度も同じ家に行くこともめずらしくない。家を留守にしがちな一人ぐらしや共働きの家庭が増えたからだ。
それなのに、宅配便の会社はドライバーの数を思うように確保できていない。工場やお店も社員を多くやとい始め、人のとりあいになっているからだ。ドライバーは働く時間が長くて、なりたがる人も少ない。
宅配便の会社で最も大きいヤマト運輸は2月、社員が入る労働組合から「これ以上の荷物は運べない」といわれた。休まずに働いても届けきれず、約束の時間に遅れることも出ているためだ。その後、サービス残業の全社的調査で、ドライバーら4万7千人に支給する未払いの残業代が少なくとも約190億円に上ることが、4月中旬に発表された。
そこでヤマトは、荷物が届く時間帯を選べるサービスを見直すと決めた。「正午~午後2時」を選べないようにするなどし、ドライバーが休憩をとりやすくする。さらに荷物を運ぶ料金を値上げし、ネット通販の会社には、「送料無料」「当日お届け」といったサービスも変えるようお願いしている。ネット通販での買い物は少し不便になるけど、ドライバーの立場を考えることも必要だ。
佐川急便や日本郵便など、ほかの宅配便の会社もなやみは同じで、通販会社に似たお願いをするとみられている。通販は宅配便なしでは成り立たないから、応じる可能性が高い。(解説/朝日新聞経済部・内藤尚志)
※月刊ジュニアエラ 2017年6月号より