―― 新しい宇宙望遠鏡のすごいところは?

 特に期待されているのは、月や火星よりずっと遠く、太陽系の外の惑星の生命の可能性を探れることだね。

――そんなことができるの?

 太陽系の外ですでに見つかっている約4千以上の惑星のうち、10~20には表面に水があるのではないかと考えられている。水があれば、生命が生まれているかもしれないけれど、確かめるのが難しかった。でも、「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」は、目に見えない赤外線をとらえる機能を備えているから、水の存在を確かめられる科学装置になるのではと期待されているんだよ。さらに、宇宙の果てを調べる研究でも大活躍するだろう。

――将来、宇宙開発の仕事がしたい!と思ったら?

 月に行く計画も火星の探査も、新しい宇宙望遠鏡も今まさに大きく進もうとしているところなんだ。小中学生が大人になるころには、ちょうど準備ができていると思うよ。

――そのために今、どんなことをすればいいの? やっぱり勉強かな。

 勉強だけじゃなくて、遊んだり、スポーツをしたりすることも大切だよ。宇宙開発のように、だれも答えを知らない問題を解決する仕事は、一人の力では成し遂げられない。たくさんの分野の人たちが集まって、お互いの能力をうまく生かして初めて、問題を解決して前に進める。そこで大切なのは、人間関係を築く力だ。

――それは、空気を読めっていうこと?

 そうじゃないよ。空気を読んで、自分の意見を言わずに黙っていたら、難しい問題の解決策は見つからない。違う意見の人がいるとわかっていても、自分の意見は堂々と主張することが大切だ。

 ただし、主張するだけじゃいけない。お互いを認め合い、尊重しながら意見をぶつけ合ってこそ、前に進めるんだ。みんなの意見を冷静に聞いてまとめるリーダーも必要だね。友達と遊んだり、ケンカしたり、スポーツに打ち込んだりした経験は、その際、きっと役立つと思うよ。

 今、世界では国同士でも国のなかでも互いを認めず、信頼しないことが多い。そんな状態では、宇宙開発は決してうまくいかない。宇宙開発の歴史を振り返ると、アメリカとソ連の対立を乗り越え、世界各国が参加してISSをつくりあげることができた。その経験を生かし、国同士のみならず、民間の企業も協力して、大きな目標に向かって、力を合わせていかなきゃね。

【縣秀彦先生】
1961年、長野県生まれ。国立天文台天文情報センター国際普及室長。著書・監修書に『宇宙の不思議 太陽系惑星から銀河・宇宙人まで』(PHP研究所)、『学研の図鑑LIVE 宇宙』など多数。

※月刊ジュニアエラ 2021年4月号より

ジュニアエラ 2021年 04 月 増大号 [雑誌]

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AERA編集部
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