自宅で学び、卒業できる選択肢がありながらも、自ら高校中退を選んだ息子。一方、娘は、高校在籍中に短大の卒業資格を得るプログラムに参加し、通学とオンラインの両方を活用したハイブリッド教育で高校を卒業しました。

娘の高校の卒業式。式に参加する、しないは生徒たち自身が選ぶ
娘の高校の卒業式。式に参加する、しないは生徒たち自身が選ぶ
高校中退を決めた息子もいっしょに、娘の高校卒業を祝う
高校中退を決めた息子もいっしょに、娘の高校卒業を祝う

ひとつの正解だけじゃなくていい

 高校中退後、車やバイク、自然が大好きな息子は、洗車場でのアルバイトや、金属塗装の工場で作業をしながら、興味を活かせる環境の中で成長を続けてきました。現在はパワースポーツ専門店(バギーやオフロードバイクなどのレジャー用エンジン車を扱うディーラー)に就職し、お客さまにバイクの魅力を伝えながら、自分の好きな分野で仕事を楽しんでいます。

 一方、娘は高校卒業後、大学院まで進み、法律事務所でパラリーガル(弁護士のサポートをする専門職)として働いています。

 2人とも今では成人し、経済的にも自立して、それぞれの人生をエンジョイしています。

 アメリカのように「どう学ぶか」を自分で選べる文化を知ると、「ひとつの正解だけじゃなくていいんだ」と、少し心がゆるみます。

 子どもが学校に行けない日があっても、「この子なりのリズムで学ぶ力がきっとある」と信じて見守る。そんな視点が、親としての心にも小さな余白を与えてくれます。

 子どもに合った学びのかたちは、いつだって見つけられる。そう信じられる社会に向けて、まずは大人のまなざしから変えていけたら。それもまた、大切な「教育」の一歩なのかもしれません。

※前編<「不登校」をめぐる日本とアメリカの違いとは? 学校に行かないことは「選択肢の一つ」にしかすぎない>から続く

中学時代に完全に不登校だった息子が高校生活を満喫! きっかけとなった“意外な出来事”とは【体験記】
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トロリオ牧
アメリカ・ユタ州在住ライター トロリオ牧

2001年渡米、ユタ州ウチナー民間大使。アメリカ空軍認定の自宅を利用した家庭的保育を運営後、児童発達センターで子どもの発達支援・保育に携わる。アメリカ政府職員として17年間務めるが、パンデミックをきっかけに「悔いのない生き方」を選び2023年9月に辞職。現在はNHKラジオ出演や日本のWebメディアで執筆など、幅広く活動中。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。

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