聴く人を瞬時にとりこにする音の躍動感、オリジナリティーあふれる編曲。YouTubeチャンネル登録者数は90万人、音楽番組には引っ張りだこ、いまや新時代のピアニストとも言われる角野隼斗さん。「AERA with Kids」春号では、「東大大学院出身の異彩を放つピアニスト」の子ども時代に迫りました。

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 ピアノは物心がつくころには自然と弾いていました。母はピアノの先生をしていますが、「練習しなさい」と厳しく言われたことはなく、ゲーム感覚で練習を楽しめるように工夫をしてくれていたようです。練習はあまり好きではなかったけれど、本番で弾くのは楽しかった。だから、ピアノをやめたいと思ったことは一度もないです。今でも実家に帰ってリビングにあるピアノを弾いていると、「その音、違うんじゃない?」と母から指摘が入ります(笑い)。

 小さいころから、算数にものすごく興味がありました。数字が好きで、計算ドリルを先取りしてどんどん解いていました。小学生のときにはピアノの練習メニューや成果を表やグラフにして、それを楽しんでいるくらい(笑い)。父がディズニーランドの待ち時間や車の渋滞中に、よく算数のクイズを出してくれたのを覚えています。マッチ棒を使った問題とか、魔法陣とか、パズル問題が多かった。

 小4までは「ひょうきん者」「ピアノ得意キャラ」。勉強もそれなりにできていたかな。でも、小5くらいから優等生ぶっていることに嫌気が差してきて、授業を聞かずにしゃべっていて、先生から注意されることが増えました。聞いていないのに、テストはできる。イヤなやつですよね。学校の勉強に物足りなさを感じていました。

 そんな様子を察した母が、新しい環境があったほうがいいと塾をすすめてくれたんです。その後、自分から「受験したい」と言ったかどうか記憶は定かではないのですが(笑い)、中学受験をすることに。地元を出て、外の世界を見てみたいという気持ちがモチベーションになっていたと思います。

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小林佳世
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