「夏を制するものは受験を制す」――。夏休みは、中学受験の勉強をスタートさせたり最後の追い込みに入ったりする家族が多い季節でもある。勉強してもしても成績があがらない、苦手な科目をどうしても克服できない――。中学の受験勉強ではどうしても、そんな「壁」にぶつかりがち。その壁を親子で乗り越える方法を、国・数・理・社、4教科の専門家にずばり聞いた。「南雲国語教室」南雲ゆりか先生は、「国語は問題数をこなすよりも『精読』が大事」だと話す。

国語・合格への3カ条
国語・合格への3カ条

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■親子で取り組む「スイッチバック読み」

 長い文章を読むのに時間がかかる、難しい文章についていけない、心情が読み取れない――国語が苦手になるポイントは様々ですが、原因はいずれも文章を読む力が不足している、ということにつきます。

 国語の壁を突破するためにはまず、「読むことに熟練する」必要があります。よく「読書しても点が伸びない」といって問題集をたくさんやらせる親がいますが、国語に関してはやる問題数を増やしても「ちゃんと読む」トレーニングができていない限り点は伸びません。大切なのは、難しめの文章を丁寧に時間をかけて読む「精読」のトレーニングです。ここはぜひ、親が手伝ってください。

 子どもは主語と述語をうまくつなげられないなど、前の内容を踏まえて後ろの事柄を理解するという力がまだ十分についていません。

 精読の方法はいろいろありますが、例えば塾の教材やテストで出た文章について親が文章中の述部を指して「ここの『動いている』って、何が動いているんだろう?」と確認したり、「この指示語が指しているのは何?」と確認したり、修飾語と被修飾語の関係や会話文の話者などを一つひとつチェックしながら読んでいく方法があります。

「スイッチバック読み」と呼んでいる方法で、丁寧にやると1時間くらいかかりますが、確実に力がつきます。

■読書は合格の「必要条件」 勉強と思って読書時間を

 また、読書はどうしても受験勉強のなかで軽視されがちですが、読解力をつける「必要条件」ではあります。1日10分でもいいから少し難しい文章を「勉強」として読む習慣をつけてください。10分間で読める文章量は、入試問題の大問の文章量とほぼ同じです。もちろん、好きな本も読ませてあげてください。

 漢字が苦手というケースも多いですが、中学入試で問われるのは漢字そのものよりも語彙の力。意識的に語彙を増やしていきましょう。日常的に難しい言葉を使ってみたり、ニュースで見た単語を「この言葉知ってる?」と聞いてみたり。国語ができる子はそういう環境で言葉に自然に親しんでいる、ということが多いです。

 辞書はできれば中学、高校生向けのものを使ってください。「自分で調べなさい」ではなく、親が教えるか、一緒に調べてあげましょう。

 心情読解問題が難しいという児童もいますが、中学入試の設問の大半は「誰が読んでもそう読み取れる」という部分を聞いてきます。状況と心情の基本的なパターンを教えてあげることである程度はクリアできます。(文・福井洋平)

○プロフィール
南雲ゆりか(なぐも・ゆりか)/東京都生まれ。南雲国語教室主宰。小学校教諭を経て、大手進学塾で最難関コースの指導と模試・教材の作成を担当。著書に『笑って合格する!「中学受験」必勝法』『考える力がつく「国語」勉強法』など。

※AERA進学BOOK「カンペキ中学受験 2020」から抜粋

カンペキ中学受験 2020 (AERA進学BOOK)

アエラムック教育編集部

カンペキ中学受験 2020 (AERA進学BOOK)
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福井洋平
あさがくナビ編集長 福井洋平

2001年朝日新聞社に入社。週刊朝日、青森総局、AERA、AERAムック教育、ジュニア編集部などを経て2023年「あさがくナビ」編集長に就任。「就活ニュースペーパー」で就活生の役に立つ情報を発信中。