言葉通り、ジョアニークラブに流れる時間は家庭的だ。お絵かきや工作、ボードゲームと、まるで自分の家のよう。ジョアニークラブを委託運営する放課後NPOアフタースクールの石井眞由子さんはこう話す。
「自主的に遊びを生み出せるように、工作用の空き箱や布、画材やおもちゃなどを用意しています。『こうしなさい』という誘導はしませんが、気がついたら段ボールで大きな犬小屋ができていたりして、子どもたちの創造力には驚かされています(笑)」
■「聖心らしさ」を学童保育の中にも
楽しい行事もある。先日は、フェアトレードに関わる仕事をしている卒業生に来てもらい、開発途上国について話を聞いたあとに、その国で作られた材料を使って制作をした。卒業生が主宰する礼法教室の講師を招きマナーについて学ぶ機会もあり好評だという。
16時になると、お楽しみのおやつの時間だ。てきぱきと配膳する上級生に、低学年の子どもたちも刺激を受ける。
「子どもですから、人のためにできることは少ないかもしれません。けれど、自習時間は周囲の人のために静かにする、配膳を手伝う、そういう小さなことを学べる場所でもあってほしいと思います」(大山校長)
■私立小学校に広まるアフタースクール
聖心女子学院初等科が学童保育を委託しているのが、「放課後NPOアフタースクール」。公立私立を問わず、アフタースクールを展開している非営利団体だ。ここ数年、私立小学校の学童保育のニーズが高まっていると、事務局長の島村友紀さんは実感している。
「私立にも共働きが増えているのは確かですが、それ以上に、学童保育の時間が子どもの成長に重要な意味があると捉える保護者が増えていると感じます」
同NPOが誕生したのは2004年。全国で小学生の連れ去り事件が多発した時期だった。「放課後の安全についての意識が高まるきっかけの年」と島村さんは振り返る。さらに2000年代後半は働く女性が急増し、保育園の待機児童問題が顕在化した。6年後、今度は学童保育のニーズが高まった。
「安全性に不安があると、子どもの遊びや自由は制限され、ゲーム三昧になりがちです。けれど、学校と家庭のはざまにある『放課後』というすき間時間に、友だちとあれこれ考えて遊びこむ経験が、10年後、20年後の彼らの芯になるのではないでしょうか。ゆるやかに見守る大人の目の中で、のびのびと遊べる時間はすべての子に必要です」
そういう意味で、学童保育は子どもたちの成長にとって大切な役割も担っているのだ。
(文/神素子)