親子で過ごす休日を増やそうと、政府が「キッズウィーク」の導入を決めた。本当にこれで親子の時間は増えるのだろうか? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞経済部・平林大輔さんの解説を紹介しよう。

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 政府が「キッズウィーク」という新たな連休を来年度から導入する。学校の長期休暇の一部を別の時期に移し、その時期に保護者に有給休暇(有休)を取ってもらい、親子で過ごす休日を増やすことがねらいだ。最も長いケースだと、平日の5日間を移せば、前後の土日とあわせ9連休になる。企業などにも協力を呼びかける。

 ポイントは休みの時期を地域ごとに変えること。「A県は8月の休みを10月に」「B県は7月の休みを11月に」それぞれ移すことなどが考えられる。休みが分散すれば、観光地や交通機関が混みにくく、旅行やレジ
ャーに出かけやすい。国内旅行の支出が4千億円増えるとの予測も発表されている。

 安倍晋三首相は5月、「ゴールデンウィークなどはどこもかしこも大渋滞。料金も高くて出費がかさみ、出かけるのも嫌になってしまう」と述べ、キッズウィークを「負のサイクルを打ち破るためのチャレンジ」と説明した。実際にキッズウィークを導入するかしないかや、導入した場合の休みの時期や長さは、都道府県や市区町村ごとに決める。

 問題は子どもにあわせて保護者が休みを取れるかどうか。2016年の調査によると、有休の取得率は5割弱。政府は20年までに7割に引き上げる目標を掲げているが、近年は伸び悩んでいる。そもそも人手が足りない運送業や建設業では、「休みたくても休めない」との声がある。飲食店やスーパー、病院、介護施設などでは休日に働く人も多い。保護者が休めない家庭での子どもの過ごし方も課題だ。

 地域ごとに学校や経済団体の代表が集まる会議をつくり、「休み方改革」の方法を話し合ってもらう。だが、休む時期は強制できず、どこまで協力が得られるかはわからない。連休が3、4日ほどにとどまる地域も多そうだ。

 学校生活への影響を心配する声もある。夏休みの時期が地域ごとにちがうと、部活動の大会や子ども向け行事の日程は限られる。塾では、講習などの日程を組みづらくなりそうだ。

 新しい連休をつくって、親子で一緒に過ごす休日を増やすことは簡単ではない。(解説/朝日新聞経済部・平林大輔)

【キーワード:有給休暇】
会社などを休んでも賃金が支払われる休暇。勤続年数に応じ、毎年一定の日数が定められている。「仕事が多くて休めない」「職場の雰囲気で取りづらい」といった声も多く、日本の取得率は先進国の中で最も低い水準にとどまっている。政府が進める「働き方改革」では、長時間労働を改め、有休をしっかり取ることが課題とされている。

※月刊ジュニアエラ 2017年9月号より

ジュニアエラ 2017年 09 月号 [雑誌]

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平林大輔
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