50年6月には北朝鮮が韓国に攻め込み、朝鮮戦争が始まる。53年に休戦協定が結ばれたが、南北の分断は固定化した。

 北朝鮮が休戦協定を結んだ相手は国際連合(国連)軍だが、その中心はアメリカ。北朝鮮にとってアメリカは、まだ戦争が完全に終わっていない相手だ。北朝鮮の指導部は常に、自分たちの体制をアメリカなどにひっくり返されないか、恐れ続けてきた。そうした状況で、北朝鮮は核やミサイルの開発で軍事力を高めることでしか、身を守る方法はないという考えに凝り固まっていったようだ。

 北朝鮮を特徴づけるもう一つの要素が、「国父」である金日成主席から続く権力の世襲だ。94年7月に金主席が死去すると、息子の金正日総書記が権力を継承。2011年に金総書記が死去すると、またも息子の金正恩第1書記が権力を継いだ。

 平等を建前とし、集団指導体制をとることも多い社会主義国では、たとえ強力な指導者がいても、3代にわたり権力を世襲するのは異例だ。北朝鮮の指導部は「金王朝」とも呼ばれるただ1人の絶対権力者が支配する体制を守るため、国民が体制に刃向かわないように考え方を教育する「思想統制」や、反体制的な人たちを処刑したり、捕まえたりする「恐怖政治」で締めつける一方、核やミサイルで国際社会を威嚇し続けてきた。すべては今の体制を維持するためだと考えれば、北朝鮮の行動の理屈が見えてくる。

 では、北朝鮮とどう付き合っていけばいいのか。日本は02年に当時の小泉純一郎首相が訪朝して金正日総書記と会談。「日朝平壌宣言」で国交正常化交渉の再開などで合意したが、日本人拉致問題の影響などで進んでいない。14年には拉致被害者などの再調査で日朝が合意したものの、今回の核実験などで日本が独自制裁を決めると、北朝鮮側は反発して調査の中止を宣言。両国の関係はうまくいっていない。

 国際社会には、厳しい制裁を続けて態度を変えさせるしかないという声がある一方で、粘り強い対話の必要性を説く人もいる。答えは簡単ではないが、国際社会の知恵が試されているのは確かだ。

(解説・貝瀬秋彦/朝日新聞国際報道部)

※月刊ジュニアエラ 2016年5月号より

ジュニアエラ 2016年 05 月号 [雑誌]

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AERA dot.編集部
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