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再生可能エネルギーの弱点を補う手段として、各国が開発にしのぎを削る大規模蓄電システム。その1つ、電源開発(J-POWER)が海外で展開する揚水発電「ウォーターバッテリー」が脚光を浴びている。その代表格と言えるのが、オーストラリアの金鉱山跡地をアップサイクル(創造的再利用)する揚水発電プロジェクトだ。プロジェクトを率いるキーマンが目指すものとは――。

【Vol.12】「ゼロイチ」で時代を切り拓く 金鉱山跡地をアップサイクル「豪州揚水発電プロジェクト」の真髄

オーストラリア・クイーンズランド州キッドストンにある金鉱山跡。現在は雨水がたまって人工の湖のような状態になっている。この跡地を揚水発電所に“アップサイクル”するという斬新なアイデアを形にしようという取り組みが、キッドストン揚水発電プロジェクトだ(写真提供:電源開発株式会社)

 カーボンニュートラルの実現に向けて、発電時に二酸化炭素(CO2)を出さない再生可能エネルギーの普及が世界的に加速している。

 その中心となる太陽光と風力には、自然エネルギーならではの大きな弱点がある。発電出力が天候や時間帯に左右されるという点だ。太陽光の出力は日差しのあるなしで変動し、風力は風の強弱で変わる。

 電気は需要(消費量)と供給(つくる量)が基本的に一致していなければならない。需給のバランスが崩れると電気の品質(周波数)が乱れ、最悪の場合、大規模停電が起こる可能性もある。

 世界的には現在、火力発電などの出力を増減させることで需給バランスを調整しているが、カーボンニュートラルが喫緊の課題となっている今、化石燃料を使って発電する火力ではなく、再エネで発電した電気を蓄える大規模蓄電システムの重要性が高まっている。

脚光を浴びる
ウォーターバッテリー

 そうした中で脚光を浴びているのが、再エネでもある水力発電の一種、揚水発電だ。

 揚水発電とは、高低差のある2つの貯水池で構成される。夜間などの余剰電力のある時間帯に低い地点にある調整池(下池)から高所の調整池(上池)に水を汲み上げておき、電力需要が高まる昼間などに上池から下池に水を放流して発電する。いわば水に「バッテリー」のような役割を持たせる発電方式だ。

 揚水発電は100年以上前から存在するが、「蓄電池」としての機能が注目されるようになり、中国や米国、オーストラリアなど各国で新設計画が相次いでいる。

 J-POWERはこれに「ウォーターバッテリー」と名付け、同社が国内で長年培ってきた技術と運用ノウハウを武器に、世界に挑んでいる。

 ウォーターバッテリーの海外展開を率いるのは、瀬下健一。前職の総合商社勤務時代から一貫して海外電力・発電事業関連に携わり、J-POWER入社後はフィリピンでの揚水発電事業会社買収や、日本政府が掲げるインフラ輸出事業支援の案件受注など、いくつもの大型プロジェクトを主導してきた。

 その瀬下が2016年、太陽光・風力など再エネを含む蓄電事業の海外展開を任され、ゼロからプランを練って導き出した場所がオーストラリア。クイーンズランド州北部、同国では40年ぶりとなるキッドストン揚水発電プロジェクトへの参画だった。

 オーストラリアに着目したのは必然だったと瀬下は言う。

「再エネはその国の政策や制度が整っていることが重要なので、事業投資の観点から有望となるのは勢い先進国となる。その中でも、化石燃料を使って発電する火力発電所が最近休廃止されていて、環境意識も高い国。かつ、当社にとって知見があり、信頼できるローカル・パートナーと組める国。そう考えると、おのずと展開できる国は絞られてくるわけです」

 オーストラリアは世界有数の石炭と液化天然ガス(LNG)の輸出国。一方で、再エネの導入にも積極的で、最近では発電量の約3割を占めている。この割合をさらに増やしていくために欠かせないのが大規模な蓄電システムだ。

海外展開で初めて
上場企業に投資

 最終的にオーストラリアでの展開を選んだ背景には、いくつもの理由がある。

 1つは、再エネ需要が見込まれる国であるということ。現在のオーストラリアの電源は石炭火力が約半分を占めているが、見方を変えれば、再エネに置き換え可能な潜在需要が大きいとも言える。

 2つ目は、自然エネルギーのリソースが十分にあること。いくら需要があっても“使える”再エネ資源がなければ置き換えられないが、オーストラリアはとくに太陽光発電のポテンシャルが高いと言われている。

 ほかにも、政府が再エネの導入に積極的で日本との関係が良好であることも決め手になった。さらに、J-POWERはすでにオーストラリアの炭鉱開発のほか、最近ではCO2回収・貯留(CCS)や褐炭水素プロジェクトなども手掛けており、一定の知見があって、しかも日本とのエネルギー・サプライチェーンが構築されている。そうしたいくつもの条件を満たしていたのがオーストラリアだった。

 事業の展開先の国は絞った。では、誰と組むのか?

 瀬下はこの難題にもうってつけのパートナーを見出した。オーストラリアの株式上場企業の再エネ発電専業ベンチャー、ジェネックス・パワーだ。

 社員数は当時5人ほどに過ぎなかったが、すでに大規模太陽光発電の実績があり、上場もしている。何より、彼らは世界に類を見ないアイデアで揚水発電を行おうとしていた。

 閉鎖した金鉱山を“アップサイクル”して、揚水発電所をつくることだった。

キッドストン揚水発電所(出力25万kW)は、ジェネックスがこの一帯で手掛ける「キッドストン・クリーンエネルギー・ハブ」の主要施設。ジェネックスによると、オーストラリアでは約40年ぶりの揚水発電プロジェクトで、国内では3番目に大きな蓄電システム(※)だという(写真提供:電源開発株式会社)

キッドストン揚水発電所に隣接する出力5万kWの大型太陽光発電施設は2017年に運転を開始。ジェネックスはさらに15万kWの風力発電設備を近隣に建設する計画で、2025年の運開を目指している(写真提供:電源開発株式会社)

「金鉱山跡地をアップサイクルするとは言え、揚水発電所の建設には時間もお金もかかりますし、水を上げ下げするトンネルを新たに掘るため、それが技術的に可能かどうかを判断する知見や経験が必要になる。にもかかわらず、彼らはやろうとしていた。相当にチャレンジングだなと思いました」

 それまでのJ-POWERは、海外事業に出資をする際にプロジェクトに直接出資する形を多くとっていた。しかし、瀬下が進めたのはジェネックス・パワーという企業そのものへの出資だった。

筆頭株主として
経営ボードに参画

 ジェネックスには大規模な太陽光発電を成功させるほどのマネジメント能力や再エネの知見・アイデアはあるが、揚水発電に関する技術力も資金力も乏しい。ジェネックスに足りない点をJ-POWERなら補える。そう言って瀬下はジェネックスにアプローチを重ね、粘り強く交渉した。

「オーストラリアの再生可能エネルギー庁(ARENA)からJ-POWERを紹介された」と語るジェネックスの最高経営責任者(CEO)、ジェームズ・ハーディングは当時をこう振り返る。

「J-POWERとは当初、ジェネックスのフラッグシップ・プロジェクト『キッドストン揚水発電プロジェクト』に50%出資する方向で話を進めていました。しかし、エナジーオーストラリア(オーストラリアの電力小売大手)が同プロジェクトに50%出資する意向が明らかになると、J-POWERとの話し合いはプロジェクトへの投資ではなく、ジェネックスそのものへの出資という長期的なパートナーシップを模索する方向に変わっていったのです」(ハーディングCEO)

 最終的にエナジーオーストラリアは出資を断念し、プロジェクトはジェネックスが100%所有することになった。しかし、有望な大規模再エネ案件を複数抱えるジェネックスの将来性を確信していた瀬下は、引き続き同社に対する出資を模索。J-POWER経営陣もゴーサインを出し、ついにJ-POWERの海外事業で初となる上場企業への出資、それも筆頭株主になることを決断した。

「J-POWERのような技術力のある国際企業が筆頭株主になる決断をしてくれたことは、金額面だけでなく、技術面でも極めて重要なことだったのです」(ハーディングCEO)

ジェネックスの経営陣と。後列左がハーディングCEO、同右が瀬下(写真提供:電源開発株式会社)

 もちろん、J-POWER側もリスクマネジメントを徹底した。揚水発電が世界的に脚光を浴び、ジェネックスに対する業界の評価が高いからと言って、それだけで出資を決断するわけにはいかない。

 キッドストン揚水発電計画に関しても、契約締結前に技術者を派遣してボーリング調査などを実施。取締役のポストとジェネックスが今後手がけるプロジェクトの優先交渉権を契約に盛り込むなど、お飾りの筆頭株主ではなく、真のパートナーシップを築くための条件交渉も行った。

「CEOのジェームズをはじめ経営陣とは、相当やり合いながら契約内容を詰めていきました」

 そうして2021年5月、J-POWERはジェネックスの普通株式10%を取得して筆頭株主となり、瀬下は非常勤取締役として経営ボードに加わった。

新しいゲームの
ルールを作るために

 世界でも類を見ない、閉山した金鉱山のアップサイクルを兼ねた揚水発電プロジェクト。加えて、J-POWERの海外事業で初となる上場企業への出資。未知のリスクが潜む案件に、なぜ瀬下はあえて挑戦するのか。

 そこには瀬下ならではの危機感がある。

 日本のエネルギー需要は頭打ちになっており、カーボンニュートラルへのシフトは待ったなし。世界を見渡せば、大手電力会社や商社、投資ファンドなどが再エネのビジネスチャンスを探し続けている。

 そうした強豪ひしめくジャンルで他社に打ち勝つため、J-POWERは自らの強みを生かし、他社が思い至らなかったような仕組みやプロジェクトに挑戦する必要がある。瀬下の言葉を借りれば、「自分たちで新しいゲームのルールを作る」こと。それが、海外電力・発電事業に長年携わってきた瀬下が導き出した答えだ。

2011年、瀬下(中央)はセントラルジャワ事業会社の初代社長としてインドネシア国営電力会社と売電契約を調印。インドネシア政府が力を入れる国家プロジェクトということもあり、調印式には当時のハッタ経済大臣(左から6番目)、J-POWERの北村雅良社長(当時。同2番目)も列席し、盛大に執り行われた(写真提供:電源開発株式会社)

「インフラ投資案件で最終的な勝者になるには、組織力と資金力がモノを言います。J-POWERが名だたる電力会社や大手商社と本気のマネーゲームをしても、勝てる見込みはなかなかありません。

 だから我々は自分たちの技術力を生かし、他社はやりたがらないけれど、将来性のあるプロジェクトを発掘し、そこに果敢にチャレンジしていく必要がある。生き残るためには既存のゲームに参加するだけではなく、自分たちで新しいゲームやゲームのルールを作らなければいけないのです」

 結果として、瀬下の手掛けるプロジェクトはその分野を切り拓く第一号のプロジェクトばかりになる。新たな発想で新しいモノやサービス、付加価値を生み出すことを最近はよく「ゼロイチ」と表現するが、瀬下がしていることはそれに近いと言っていい。

「誰もやらない、思いつかない仕組みに、最初に挑戦したほうが面白いじゃないですか。それに、他社にやられるなら、絶対J-POWERがやるのがいちばんいいという確信があるんです。

 エネルギー・インフラのプロジェクトは建設すれば終わりではなく、長期に運用していかなければなりません。J-POWERは出資するだけじゃない。技術力があり、地域社会と共存し、運転開始後も責任を持って運用できるノウハウがある。

 だから『これだ』と思ったプロジェクトは他社にやらせてはいけない。私たちがやるほうがその国の人たちにとっていちばんメリットがある。その確信が自分を動かしているんです」

 キッドストン揚水発電プロジェクトの稼働予定は2024年。順調にこのプロジェクトが進めば、次に瀬下がとる行動は想像に難くない。新しいゲームのルールを作るためにまた動き出すのだ。

キッドストン・クリーンエネルギー・ハブの夕景。野鳥が飛び交うのどかな田舎で一大プロジェクトが進行している(写真提供:電源開発株式会社)

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※ ジェネックス・パワーHPより

瀬下健一(せしも・けんいち)

東京都生まれ。大手総合商社を経て2004年にJ-POWER入社。国際事業本部の配属となり、国際協力銀行初のメザニンローン案件としてフィリピンの揚水発電事業会社の買収を主導したほか、日本政府が注力したインフラ輸出事業構想の草創期に第一号高効率石炭火力発電事業の発掘・開発を主導。2011年にセントラルジャワ事業会社BPIの初代社長、2015年J-POWERオーストラリア最高執行責任者(COO)などを経て現職。2021年、オーストラリア証券取引所上場企業ジェネックス・パワーの社外取締役に就任した。

文:奥田高大 写真:今村拓馬

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