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二酸化炭素(CO2)排出量が太陽光や風力よりも少なく、安定的に発電できる。そんな夢のような自然エネルギーが日本各地に眠っていることをご存じだろうか。温泉大国・日本が誇る「地熱エネルギー」だ。地熱発電に力を注いできたキーマンが抱く使命とは――。

【Vol.11】眠れる資源を見極めよ 温泉大国・日本の持続可能なエネルギー「地熱」に注ぐ使命

栗駒国定公園の一角、鬼首温泉の山中にこじんまりとたたずむ鬼首地熱発電所(更新工事前)。冷却塔から出る蒸気が湯けむりのようにも見える(写真提供:電源開発株式会社)

 

 政府が掲げる2050年のカーボンニュートラルに向け、注目が高まっている再生可能エネルギー。太陽光や風力、水力などさまざまな自然エネルギーを活用した電力があるなかで、大きなポテンシャルを秘めているのが地熱発電だ。

 地熱発電とは、地下1000メートル超の深さにある地熱貯留層(蒸気と熱水がたまっている場所)から高温高圧の蒸気と熱水を取り出し、その力でタービンを回して発電する方式だ。全国各地の温泉も、それほど深いところにある熱源ではないものの、地熱の恩恵を受けている。地熱はいわば、日本人にとってなじみ深いエネルギーなのだ。

 発電時のCO2排出量はほぼゼロ。吹き出す蒸気にごく少量のCO2を含むだけで、太陽光や風力よりもさらにライフサイクルのCO2排出量が少ない(※1)。しかも、日本の資源量はアメリカ、インドネシアに次いで世界第3位(※2)を誇る。

 資源小国の日本がカーボンニュートラルを目指す上で有望な純国産の自然エネルギーである一方、資源量の40分の1しか活用されておらず、導入できる余地が大きい。

 さらに、ほかの再生可能エネルギーにはない強みもある。例えば、日照や風、時間帯によって出力が左右される太陽光発電や風力発電と違って、地熱は安定して発電できるため、ベースの供給力(ベースロード電源)として利用できるのだ。

 そんな地熱エネルギーに魅せられ、情熱を注いできた男が電源開発(J-POWER)の赤坂千寿だ。

「大学時代に地熱のことを知り、日本にはこんなにもすごいエネルギーが地下にあるのかと驚きました。地下深くにあるマグマが冷えていく過程の熱エネルギーを使うわけですから、うまく人が使える形に変えれば、私たちが生きている年月よりもはるかに長い間、使い続けられるエネルギーになる。ただ、活用しなければいつまでも眠ったままのエネルギーです。その神秘的なところに魅力を感じて、今まで取り組んできました」

 世界有数の火山大国である日本だからこそ、活用しなければいけない。そう信じ、入社以来ほぼ一貫して“地熱畑”を歩んできた。

見えない地熱エネルギーを
いかに把握するか

 太陽光や風力よりもさらにCO2排出量が少なく、資源も豊富。そんな電源であれば普及が進んでいてよさそうなものだが、日本の電源構成に占める地熱発電の割合はわずか0.3%(2020年度)。同じ再生可能エネルギーの太陽光(7.9%)や水力(7.8%)に比べて圧倒的に低く、風力(0.9%)の3分の1にとどまっている。

 普及が進まないのはなぜなのか?

 大きな理由の一つは、調査に非常に時間がかかることだ。

 例えば、国内の大規模地熱発電所として23年ぶりの新規稼働となった秋田県の山葵沢(わさびざわ)地熱発電所。これはもともと、1993〜99年度に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が行った調査が発端だった。その後、2008年度からJ-POWERなどが調査を引き継ぎ、2019年5月に稼働。調査開始から稼働まで実に26年が経っている。

J-POWER、三菱マテリアル、三菱ガス化学が共同出資する湯沢地熱の山葵沢地熱発電所(秋田県)は2019年に運転開始した。発電出力は鬼首地熱発電所の約3倍に相当する4万6199kWで、出力1万kWを超える大規模地熱発電所の稼働は日本では23年ぶり(写真提供:湯沢地熱株式会社)

 また、地熱の多くは自然公園や温泉地など自然豊かな場所にある。そのため建設には法律の問題や環境への影響評価を慎重に行う必要があるなど、ほかの電源の開発よりハードルが高いとされる。

 つまり、事業化までのリードタイムの長さや煩雑な手続きに耐えうる「経営体力」が欠かせない。

 もう一つが、想定した発電出力が本当に得られるのか、長く使い続けられるのかといった予測が困難なことだ。

 山葵沢もそうだったように、地熱発電の候補地の選定や建設を行うには、緻密な調査を繰り返し、最後にシミュレーションで評価するという事業化調査に長い時間をかける。地熱資源量の調査・解析や地下深くの蒸気・熱水溜まりまで井戸を掘る「技術力」も必要だ。

 ただ、それでも「実際のところは、運転を開始してみないと分からない」と赤坂は言う。

「石油や石炭、ガスといった火力発電であれば燃料を購入・輸送することで柔軟に対応できますが、地熱発電ではそこにある地熱資源が減ってしまうと手の打ちようがありません。適正な出力で計画すれば持続可能な発電所となりますが、もし過大な出力を設定してしまうと、短期間で出力低下が生じてプロジェクトとして成り立たなくなってしまいます」

 それまでの調査やコストがまったくの無駄になってしまうわけだ。

「地熱発電の成否は、直接には把握できないエネルギーをいかに正しく理解できるかどうかで決まります。調査やシミュレーションがうまくいけばきちんと発電できるけれど、そうでなければ大失敗してしまう。地熱はそんな『見えない』エネルギーなんです」

人生を決定づけた
鬼首地熱発電所

 赤坂はここ数年、温泉地として有名な宮城県・鳴子温泉近くの事務所に常駐している。その鳴子温泉郷をさらに奥へと進むと、美しい大自然のあちこちに「地獄」と呼ばれる間欠泉が吹き上がる、鬼首(おにこうべ)温泉郷がある。

 この鬼首温泉郷周辺の地熱を生かし、40年以上にわたって発電を行ってきたのが、栗駒国定公園内に位置するJ-POWERの鬼首地熱発電所だ。

東北の湯治場として古くから親しまれてきた宮城県の鳴子温泉郷。最も有名な鳴子温泉からさらに奥深い鬼首温泉の山中に、鬼首地熱発電所がある(写真提供:電源開発株式会社)

 鬼首地熱発電所は、1975年の稼働開始から東北地方の主要な地熱発電所として電力の安定供給に貢献。2017年に運転を停止し、19年から設備更新工事(リプレース)に入っている。

 赤坂はいま、このリプレースを担う火力エネルギー部鬼首地熱発電所の所長代理として日々、業務に当たっている。運転開始予定は2023年4月。コロナ禍で外国人の技術者が入国できないなど困難にも見舞われたが、リプレースは順調に進んでいるという。

 実は、鬼首地熱発電所と赤坂には深い縁がある。

 赤坂が初めて鬼首地熱発電所を訪れたのは、J-POWERに入社する前のことだった。

「1988年、大学の実習で訪れたのが最初です。掘り上がった生産井(蒸気・熱水を取り出す井戸)から蒸気が本格的に出始めた直後でした。発電所が活気に満ちていて、誰もがニコニコしていたのを覚えています」

 発電所で真剣に作業に取り組む人たちの姿。生産井から絶えずわき上がる蒸気。長年の苦労が報われたときの喜び。そんな光景が忘れられなかった赤坂はその後J-POWERに入社し、現在まで30年以上にわたって地熱に関わり続けている。

 もし、あのとき別の発電所を訪れていれば、赤坂のその後の人生はまったく違ったものになっていたかもしれない。その偶然が赤坂の人生を決定づけた。

災害を教訓に、より安全に
地域と共生する発電所へ

 鬼首地熱発電所の存続が危ぶまれる出来事に見舞われたこともあった。

 2010年、発電所の生産井の近くで水蒸気爆発が発生。1名が亡くなり、1名がやけどで重傷を負ったのだ。主要の生産井3本が使えなくなり、発電出力も約1/4に低下。誰もが予期していなかった噴気災害だった。

「災害が発生する当日の朝まで、私は鬼首にいました。その後、別のスタッフと交代し、東京に戻ったばかりの時に事故発生を知ったのです。災害の第1報を聞いた時は、『なぜそんなことが』と戸惑い、事実をとっさに受け入れることができませんでした」

 現地に戻った赤坂が目にしたのは、吹き飛んだ石や塵であたり一面灰色という、変わり果てた姿だった。この時、赤坂は地熱という計り知れないエネルギーを活用する難しさを痛感した。

 鬼首地熱発電所の周囲には、自然の噴気地が広がっている。言ってみれば、常にガス抜きが行われている状態で、爆発を起こすようなエネルギーをため込む場所には思えない。だからこそ、当時はそういった災害が起こることを誰も想像していなかったという。

地熱を取り出す生産井の地上出口「坑口バルブ」。生産井をリプレース前の9本から5本に減らしつつ、以前と同等の発電出力1万4900キロワットを見込む

 予期していなかった災害を受け、一時は発電所の存廃も検討されたが、地域の後押しや専門家の助言を受けて発電所は運転を続行。リプレースにつながった。

 当時の教訓は、今回のリプレースにも生かされている。

 安全性を高めるために、地下の温度が高いエリアに点在していた9本の生産井をより安全なエリアに集約。タービンや発電機などの性能向上によって、生産井を9本から5本に減らしながらも、発電出力は従来と同等の1万4900キロワットを維持した。

 30年以上前、赤坂の人生を決定づけた発電所がいま、赤坂たちの働きによって、より安全に生まれ変わろうとしている。

「日本は火山大国で、地面の下には地熱エネルギーがたくさん詰まっている。これは世界のどこにでもあるわけではない、貴重な資源です。相手は大自然で、見誤れば手痛い目にも遭うけれど、うまく見極めれば持続可能なエネルギーとして利用できる」

 地球が何万年、何十万年という時間をかけて蓄えてきた“眠れるエネルギー”を活用するために何ができるのか――。そうした赤坂の思いは学生時代から変わらない。

「直接、見ることのできない地下深くの情報は粗く、曖昧です。もの言わぬ地球の声を聞き取るには、多くの時間が必要ですし、困難も多い。でも、その声を聞き取って、結果が出たときの喜びには換えらません。地面の下に眠っている地熱エネルギーを取り出して人々のために提供すること。それが、私たち地熱技術者の使命だと思っています」

ー ー ー
(※1)電力中央研究所「日本における発電技術のライフサイクルCO2排出量総合評価」(2016年)より
(※2)資源エネルギー庁「もっと知りたい!エネルギー基本計画④ 再生可能エネルギー(4)」(2022年)より

赤坂千寿(あかさか・ちとし)

埼玉県出身。九州大学大学院(資源工学専攻)修了後、1992年にJ-POWERに入社。技術開発部 地熱開発室に配属され、その後、豊肥地熱事業所、火力建設部 地熱開発グループメンバー、火力建設部地熱室長などを経て、2019年5月より鬼首地熱発電所長代理としてリプレース工事に携わっている。

文:奥田高大 写真:伊藤有宏

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