米オンライン誌Slate(スレート)が、ボブ・ディランの【ノーベル賞】受賞講演の『白鯨』に関する記述が、SparkNotes(スパーク・ノーツ)という学習手引き、参考書を無断引用しているのではないかと指摘している。
ディランの講演では、ハーマン・メルヴィルの『白鯨』の主要登場人物や標準的なテーマなどが大まかに説明されており、文学作品を学習用に簡潔にまとめているSparkNotesと偶然被ってしまったと解釈できるかもしれない。だが、Slateに寄稿したジャーナリストのアンドレア・ピッツァーは、ディランの講演内容と、『白鯨』には登場せずSparks Notesだけに使用されている表現との類似点を11箇所も挙げている。
例えば、ディランが「Stubbs gives no significance to anything」(スタッブは何事にも意味はないと思っている)と書いているスタッブのキャラクター紹介は、SparkNotesでは「Stubb(中略)refusing to assign too much significance to anything」とあり、“significance to anything”は『白鯨』には登場しない表現だ。
他にも、ディランが「Captain Boomer―he lost an arm to Moby. But……he’s happy to have survived. He can’t accept Ahab’s lust for vengeance.」(ブーマー船長も、モビィに片腕を奪われた。でも(中略)生きているだけで幸せだと感じている。彼にはエイハブの強い復讐心が理解できない)と書いている箇所も、SparkNotesの「Captain Boomer has lost an arm in an encounter with Moby Dick. ……Boomer, happy simply to have survived his encounter, cannot understand Ahab’s lust for vengeance.」に酷似していて、“lost an arm”や”lust for vengeance”は『白鯨』に登場しない。
また、ディランはガブリエルを“crazy prophet”と呼んでいるが、SparkNotesには“crazed prophet”と記載されていて、ざっとネットで検索してもディランとSparkNotes以外にその表現を使用している文章が見当たらない。
Slateでは全部で11箇所の具体例をインフォグラフィックで分かりやすく挙げている。ピッツァーによると、ディランは遡れば1960年代から既に他者からクレジット無しで引用してきた“常習犯”で(記事では具体例も挙げている)、本人もその行為を公に認めているという。仮に今回彼が本当にSparkNotesから引用したのだとしても、もはやデュシャンの便器やウォーホルのブリロ・ボックスの様に、【ノーベル賞】受賞講演という形で学習教材が不滅の名声を得たと見られるようになるかもしれないと彼女は書いている。
◎The Freewheelin’ Bob Dylan(Slateによる記事とインフォグラフィック)
https://goo.gl/8LSUxU