【Vol.4】社会人の学び編:あなたの「最新学習歴」は? キャリアも人生もアップデートする大人の学び
大人が学ばない国、日本
最新学習歴の更新を
――ベネッセコーポレーションはまさに幼児から大人まで、生涯を通した学びを支援していますが、日本における「社会人の学び」についてどのような課題感を抱いていらっしゃいますか。
藤井:生涯を通して学び続けることが、よりよい人生とキャリアをつくっていくために必要だという認識は、いまや世界中で広まっています。欧米では大学に通いながらインターンシップで仕事を経験することは一般的で、学びながら働く環境が整っています。そのほかにも印象的な例として、シンガポール国立大学では入学後20年間にわたり学籍が登録され、卒業後も低価格でAIやデータ解析といったテーマを受講できるシステムがあります。日本においても、企業が持続的に成長し、さらには国力を上げるために、キャリアとかけ合わせながら学び続けることが求められます。
ただ、残念ながら現在、日本はOECD諸国の中で高等教育以降の学び直し率がもっとも低い、「学ばない国」になっている。人生100年時代といわれる中、学び、働き続けることができれば、よりよい人生を描けるはずです。
飯田:社会人の学びの低迷の原因は、個人の問題に限らず、働きながら学ぶ環境が整っていないことや、学びがキャリアに直結しづらいという社会背景にも起因しています。そこで、最終学歴以上に「最新学習歴」を誇れる社会をつくりたい、そのための学びの機会を広く提供したいという思いのもと、ベネッセではオンライン学習サービス「Udemy」を展開しています。2015年から米国企業と事業提携を行い、時間と場所を選ばないオンラインで、さまざまなキャリアにつながる学びの機会を提供しています。社会人として得たスキルに加えて、さらに今後活躍するために必要なスキルをプラスアルファで獲得する「リスキリング」という言葉も定着しつつあり、学びの機運の高まりを感じています。これには、新しい生活様式を経験する中で、個々人が生き方や働き方を見つめ直し、理想を実現するために行動するようになったことが関連していると思われます。
現在進行形で
学びを仕事に生かす
――大人世代の学びというと、日本では定年後に教養をたしなむための学習というイメージでしたが、現在は、より現場の仕事に直結する必要があるということですね。具体的にはどのような学びが注目を集めているのでしょうか。
飯田:ひとつは、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で重要性が高いデジタルスキルを、キャリアに引き寄せて学ぶケースです。世界的にも、特にIT業界ではキャリアと学びを複線化して進めている傾向があります。Udemyのサービスを始めた当初も、利用者はエンジニアやデータサイエンティストなど、技術進歩が著しい職種のかたがほとんどでした。最近は他業種でも、エクセルなどのPCの操作技術に加えて、オンライン会議でのファシリテーション術など、デジタル活用を取り入れて業務やコミュニケーションの効率化をめざすかたが増えています。
ユーザーの中にはほかにも、かつてあきらめたプログラミングに30代後半で再チャレンジし、猛勉強の末エンジニアに転職し、ブロックチェーンのスペシャリストになった人もいます。コロナ禍で仕事を失った女性は、Udemyで学んだ動画編集のスキルを生かしてフリーランスで活動するようになり、家庭と仕事の両立にも成功したそうです。まさに学びでキャリアを切り開いたという事例が増えてきています。
藤井:一方で「何を学んでいいかわからない」というユーザーのかたがたの声を聞くこともあります。学習指導要領のような指針がない大人の学びにおいては、主体的にキャリアを描くキャリアオーナーシップという視点が必要です。私たちは学びの評価基準の研究開発も行っていますが、それが応用できれば、「何をどれだけ学べば、どんないいことがあるか」がわかり、一人ひとりにとって、より積極的な学びの環境を実現できると考えています。
長期化する個人のキャリアを
“自分軸”をもって豊かに
――個人と企業の関係性も大きく変わってきていますが、その点も社会人の学びに影響を及ぼしているのでしょうか。
藤井:日本を俯瞰してみると、かつては約30年といわれた企業の寿命が、DXの到来で新陳代謝が進み、約20年に短命化するともいわれています。一方、高齢化社会に伴い定年は延び、個人が働く年数は10年ほど増える。終身雇用で人財育成も企業任せでよかった時代は終わり、これからは会社にだけ頼ってはいられません。採用も欧米のように、特定の職種に専門スキルをもった人材を登用する「ジョブ型雇用」という概念が出てきて、主体的にキャリアプランやライフプランを考え、学びを通してアップグレードしていく必要があります。従来の日本ではどこかネガティブな印象があった「学び直し」という行為ですが、いまやキャリアや人生を後押しするものへシフトチェンジしているのです。
飯田:コロナ禍により企業研修の在り方も変化しました。新人研修や階層別研修などもデジタル化、オンライン化され、これを機会に社内のラーニングカルチャーを構築したり、自律型人材の育成に取り組んだりする企業も見られます。たとえば価値観や世代が異なる上司と部下が、必要な学びをUdemyで共有し、共通の体験のもと1on1(ワン オン ワン)で対話するところからアイディアが生まれ、ビジネスが加速するという実例も出ています。そして、やはり企業のトップ経営陣が学びを推奨し、発信し、評価していくことが、変化の鍵となるでしょう。会社の競争力は人です。個々の社員の成長が生産性向上につながり、会社を豊かに、ひいては国を豊かにしていくと考えます。
――個人も企業もそうした変化についていき、まさに生涯学び続けられるかどうかが、未来を変えていく鍵なのですね。そんな社会を実現させるために、今後のさらなる展望をお聞かせください。
飯田:弊社が2021年に社会人を対象に実施した調査では、スキルアップを目的とした学びを行っている「学習者」の人口は推定で約1000万人という結果が出ています。日本の労働人口が約7000万人ということを考えると、学ぶ習慣のない人は約6000万人います。その人たちに学ぶ喜びを感じてもらいたい。そのために、学びを通してキャリアアップが成功したり、望むようなライフシフトが起きたりした成功事例を、より多く伝えていきたいですね。同時に、現在いる1000万人の学習者が、今後も学び続けられる環境をつくっていくことも課題です。オンラインの利点を生かしたオプションを増やすこと、そして学びのきっかけとなる機会を今後も提供していきたいです。
藤井:日本における社会人の学びについての調査結果や指標は、一見ネガティブなものに見えます。しかし、まずは私たち自身がこのファクトを前向きに捉え、チャレンジしていきたい。何をもってよい社会・人生なのかを自分軸で考え、学び、行動で示す。それが今後を生きる子どもたちにとっても、何よりもポジティブなメッセージになると考えています。学びにはもっとさまざまな可能性や選択肢があると、世の中に提案していきたいです。
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藤井雅徳さん
株式会社ベネッセコーポレーション
執行役員 大学・社会人事業セクター長
1999年ベネッセコーポレーションに入社。入社後は、アセスメントデータを活用したコンサルティングを通して、全国の学校改革支援に従事する。2008年には、ハーバード大学などの海外トップ大学をめざす進学塾「ルート H」を立ち上げる。ソーシャルイントラプレナー(社内起業家)として、 多数の新規事業プロジェクトを担当してきた経験も。2020年より現職
飯田智紀さん
株式会社ベネッセコーポレーション 大学・社会人事業開発部長
ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)とソフトバンクグループ株式会社で経営企画・グループ会社管理、事業再生・国内外投資業務などに従事。2015年9月よりベネッセホールディングスに参画。現在はベネッセコーポレーションでUdemyを中心にリカレント教育・リスキリング事業などの新規事業開発を推進中
文:玉居子泰子 写真:今村拓馬
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