日本の人口は、2029年には1億2千万人を切り、53年には1億人を下回ると予想されている。人口がどんどん減ると、どんなことになるのだろう? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、日本国際交流センター執行理事・毛受敏浩さん監修の解説を紹介しよう。
■問題は地方から始まっている
都道府県によって人口の増え方、減り方はちがう。2010年から15年までの5年間に、東京など8都県では人口が増加する一方で、多くの県で人口が減っている。人口減少率がいちばん大きいのは秋田県で、次いで福島県、高知県、青森県となっている。すでに人口減少が起きている地域の事例を参考にしながら、これから起きることを考えてみよう。
(1)社会保障制度が成り立たない!
年金や医療保険、介護保険などの社会保障制度は、主に15~64歳の現役世代が保険料を払ったり税金を負担したりすることで、高齢者世代を支えるしくみだ。1965年には、1人の高齢者を10.8人の現役世代が支えれば成り立っていたが、2015年には1人の高齢者を2.3人で支えていた。そして、このままでは、65年には1人の高齢者を1.3人の現役世代で支えることになる。特に、人数が多い団塊の世代全員が75歳を超える25年が乗り越えられるかどうかが、心配されている。
1965年/おみこし型/10.8人で1人の高齢者
2015年/騎馬戦型/2.3人で1人の高齢者
2065年/肩車型/1.3人で1人の高齢者
(2)介護する人が足りない
高齢者の増加に伴い、介護の担い手不足が深刻だ。そのため、フィリピンやインドネシアなどから来た外国人が老人ホームなど介護の現場で働いている。2025年には介護の必要性が高まる75歳以上の人が今の1.3倍にあたる約2200万人(国民の5人に1人)に達し、介護職員が約38万人不足すると予想されている。
(3)診療所の医師がいない
人口が減ると、地域の診療所が成立せず、岐阜県ではへき地診療所の3割で常勤医師がいない。周囲を山に囲まれた河合診療所(飛騨市)の常勤医師・根尾実喜子さんは、自治医科大学(栃木県)の出身。卒業後の義務となっている9年間の地域病院・診療所での勤務で、最後の3年間をこの診療所で過ごし、その後も1人で診療所を担っている。
次のページへ