私は内気で、本ばかり読んでいる子どもでした。『海底二万里』は、主人公の海洋生物学者とその仲間が、潜水艦「ノーチラス号」に捕らえられ、謎に包まれたネモ船長と一緒に世界の海をめぐる冒険小説です。海底に広がる未知の世界に魅了され、主人公の行動力に憧れました。
夢がかなって医師になり、潜水医学を専門にしたのは、この本の影響です。
いちばん印象に残るのは、主人公が潜水服に身を包んで、初めて海底探検に出かける場面です。海上自衛隊の医師になって初めて潜水訓練をしたときや、宇宙飛行士になって初めて船外活動をしたときの自分と重なります。
本を読んだときのワクワク感が今につながっていると感じます。私に未知の世界へ飛び込むおもしろさを教えてくれた、大切な一冊です。
【影響を受けた本】
(1)『海底二万里』(上) ジュール・ヴェルヌ/作 岩波少年文庫
(2)『八十日間世界一周』 ジュール・ヴェルヌ/作 創元SF文庫
80日で世界一周できるかという賭けに勝つために、主人公が汽船、列車、ゾウ、そりなど、あらゆる乗り物を使って冒険旅行をする話。これを読んで、世界の国々に行ってみたいと思うように。まさか宇宙まで行くとは思っていませんでしたが。
(3)『どくとるマンボウ航海記』 北杜夫/著 角川文庫
医師志望でしたが、病院の中だけでは物足りないと思っていたところ、船医になれば世界の国々に行けることを、この本が教えてくれました。船は国と国の垣根を越えられる魔法の乗り物。船自体への憧れを強めるきっかけにもなりました。
※月刊ジュニアエラ 2019年8月号より
ジュニアエラ 2019年 08 月号 [雑誌]
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