【Vol.4】「私らしい乾癬との付き合い方」を見つけられたら、きっと、日々の生活はもっと充実する |AERA dot. (アエラドット)

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上野さんは、「もっと好きなことを楽しみたい」という思いで、先生と積極的にコミュニケーションをとった。それにより、再度治療と向き合うことができ、趣味を謳歌(おうか)できるようになった。一方で、藤井さんは、治療を続けられるか自信が持てず、治療を始めるタイミングを思案中だ。患者さんお二人の経験と現在の思い、先生からのアドバイスを紹介する。

【Vol.4】一人ひとりに個性があるように、乾癬との付き合い方もそれぞれでいい。自分がどうしたいかを伝え、「私らしい乾癬との付き合い方」を見つけられたら、きっと、日々の生活はもっと充実する。

「治りにくい」と聞き、
治療をあきらめたことも

 上野さんが乾癬を発症したのは31歳のとき。会社経営を始めたばかりで、そのストレスからか、額にできた発疹があっという間に頭やからだに広がった。乾癬と診断され、「治りにくい」と言われたときのあきらめのような、なんともいえない気持ちは今も忘れられない。

 皮膚症状を人に「見られたくない」というより、「見せてしまう」ことへのストレスで家族と温泉にも行けなくなり、治りにくいなら意味はないと治療もやめてしまった。

 そんな上野さんが治療を再開したきっかけは、趣味で始めたゴルフだった。「プレー後に仲間と風呂に入りたい」と思い、乾癬治療に積極的な医師を必死に調べて受診。その先生は、自らもアトピー性皮膚炎で苦しんだ経験を持っていた。

「診療の効率より患者さんを大事にし、気持ちに寄り添ってくれる先生だと感じました。その先生と出会えたことで、もう一度前向きに治療に取り組めるようになったのです」(上野さん)

 藤井さんは、勤めていた会社をやめて司法書士になった32歳のときに乾癬を発症。上野さんと同じく、医師から「治りにくい」と言われて治療をあきらめてしまう。

 一方で、藤井さんには「なぜ自分の身体を隠して生きていかなければならないのか」という葛藤もあった。病気を理解してもらえたら環境も変わるのではという思いもあり、親しい人には病気の説明をしていた。しかし、周囲の人は目立つ皮疹を見て「それ何?」とは聞くが、乾癬という病気に興味は示さなかった。

「一生懸命説明しても、ちゃんと聞いてもらえない。相手が受け取る準備をしていないのに伝わるはずがないですよね。互いのギャップに気づき、隠すほうが楽と考えるようになりました」(藤井さん)

 その後、いろいろ試したが、結局断念した。今は多くの治療法があることを理解しているが、治療費が高額になる場合があることや、治療を続けられるかどうかの不安などから、まだ治療に踏み切れずにいる。

 浜松医科大学医学部附属病院で乾癬の診療や研究に携わる本田哲也先生は、自身も皮膚疾患を経験しており、医師の言葉が患者に大きな影響を与えることを、身をもって知る医師のひとりだ。乾癬は、単純に「治る」とはいえない慢性疾患だが、「今は治療で非常によくコントロールできるようになっているので希望を持ってほしい」と患者に伝えている。

乾癬をきっかけに
絆を深めた同志として患者会を設立

 会社経営者の上野さんと司法書士の藤井さんは、数年に一度、仕事で会う関係だった。あるとき、互いに乾癬の患者であることを知り、意気投合する。

 その後、東京で行われた「世界乾癬デー」のイベントに参加した藤井さんは、乾癬の患者会があることを知り、「京都で一緒にやりませんか」と上野さんを誘った。藤井さんと一緒に東京の患者会「東京乾癬の会 P-PAT」の理事長である大蔵由美さんに話を聞きに行った上野さんは、「大蔵さんのポジティブさに魅了されてしまった」と振り返る。

「それまでは乾癬をハンディキャップだと思っていたのが、大蔵さんと話してそうではないと思えたのです。この出会いも乾癬になったからこそ。悪いことばかりじゃないと実感できて、この気持ちの変化を多くの人に広めたいと思いました」(上野さん)

 そして、上野さんと藤井さんは「Psoriasis of Kyoto ~京都乾癬の会~」を設立した。

 藤井さんは、患者会の活動を通して社会における乾癬の認知度を上げたいと考えていた。症状を見たときに説明しなくてもすむほど、乾癬という病気を多くの人に知ってもらいたい。そのための啓発が患者会設立の目的だったが、実際に活動を始め、患者本人も病気や治療の正しい知識を得た上で、自分で乾癬とのつきあい方を選択する力、つまり「患者力」を上げることが必要だと考えるようになった。

「患者が知識を持ち、医師に『こういう治療法があると聞いたのですが』と言えるだけで、その先に進めるかもしれない。患者力を上げることも、患者会の意義と考えています」(藤井さん)

 乾癬をとり巻く医療の環境は、この10年で大きく進化していると本田先生は言う。だからこそ、「医師と患者さんが意思の統一を図ることは大切」と話す。乾癬とのつきあい方や望む治療は患者それぞれであり、生活や経済的な背景なども考慮した上で個々に応じた診療が求められるからだ。

「治療で目指すのは検査結果の数値ではなく、患者さんがどこまで求めるか、何をしたいかなどを総合的に考えて、その状態をキープできること。患者さんと一緒にそこを目指すのが医師の役割と考えています」(本田先生)

治療の選択はそれぞれでも、
これからも共に進み、人生を楽しんでいく

 治療の選択について、本田先生はこう話す。

「患者さんは、今後の不安や経済的な問題など多くのことと折り合いをつけなければなりませんが、そうしたことも含めて医師に相談してもらえたらと思います。医師と患者さんがコミュニケーションを図りながら、患者さんが納得できる方法を探していけるといいですね」

 藤井さんは、「患者会で医師に最新の情報の話を聞くことや、症状が改善してイキイキと暮らす人と出会うことで、多くのことを学んでいる」と話す。今では自分の個性のひとつになっている乾癬と、今後どう向き合っていくか。いつ、どういう治療を選択するか。「前向きに考えていきたい」と話す。

 乾癬になったからこそ出会えたものもたくさんあるという藤井さん。「乾癬は完治がむずかしい病気だけど、人生を豊かにするアイテムにもなる」と考えている。

 上野さんも、乾癬になったことで得たものは多いと考えている。そのひとつが患者会だ。乾癬の患者はとても仲間意識が強い。「海外で日本人に会ったときのように、初対面でもすぐ友達になってしまう」と話す。患者会の仲間や先生方、多くの知識や経験、それらは乾癬になったからこそ出会えたものだ。患者会の活動を通して、悩んでいる人たちに「乾癬になっても楽しめる」と伝えていきたいと思っている。

疾患についてのさらに詳しい情報はこちら
https://kansen-chiryo.net/line/

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