【Vol.1】 ひとりじゃない。自分に正直になって思いきって踏み出したら、新しい世界が開けた

「理解してもらえない」と
周囲にも話せずにいた日々

 思春期に尋常性乾癬と診断された岩﨑さん。乾癬が慢性の疾患であり、「治らない」と告げられて大きなショックを受け、症状や将来への不安から落ち込む日々が何年も続いた。

 皮膚症状がひどくなるにつれ、かゆみなどのつらさも増したが、最もつらかったのは「見た目の変化」だったと岩﨑さんは話す。人目につくところにも症状がみられ、会うたびに人から「どうしたの?」などと聞かれることもストレスになった。また、自身にとってはつらい症状を、周囲の人はあまり重く受け止めていないと感じ、病気への理解や意識のギャップも感じた。

 当時は、洋服も「着たい服」より「症状を隠せる服」ばかり選び、職場の同僚にも「どうせ理解してもらえないだろう」と病気のことを伝えられなかったという岩﨑さん。ひとりで気持ちを抱え込み、医師にもその思いを話せなかった。

「診察のとき、『どうですか?』と聞かれても、『治らないのだから仕方ないのだろう』とあきらめのような気持ちがあり、つらい思いなどは話していませんでした」(岩﨑さん)

 群馬大学医学部附属病院皮膚科の安田正人医師は、慢性疾患である乾癬との向き合い方についてこう話す。

「患者さんにとって『治らない』という言葉は非常に重いものでしょう。ただ、乾癬以外にも、高血圧や糖尿病など、適切な治療でコントロールしながら長くつきあっていく病気はあります。乾癬も、現在は治療の選択肢が広がりよい状態を保てるようになってきているので、『上手につきあっていく病気』と考えていただけるといいですね」

患者会に参加するという「大きな関門」を
乗り越えた先にあった、新たな出会い

 なかなか症状が改善せず、インターネットで病気のことを調べていた岩﨑さんは、患者会の存在を知る。しかし、前向きに治療に向き合えていなかった岩﨑さんにとって、患者会に参加することも「大きな関門」だったという。

 何年もひとりでつらさを抱え込むなかで、「よくなりたい」という気持ちが芽生え始めていたことや、「病気を理解している人と気持ちを共有したい」という思いが強くなったことから、患者会に参加したいと考えた。ただ、いきなり大勢の参加者が集まる場に行く勇気は持てず、最初は患者会でも少人数の食事会など、小さな集まりに参加することから始めた。

 その後は少しずつ、自分のペースで患者会との距離を縮めていった岩﨑さん。数年後には、患者会のイベントに参加したり、自らの体験を講演したりする機会もあり、乾癬である自分をオープンにすることで、岩﨑さんの気持ちは変化し始めた。
「閉じこもって一人で悩んでいても、オープンにしてふつうに生活していても、どちらにしても乾癬と一生つきあっていくのなら、オープンにしていたほうがらくだし楽しい、という開き直りのような気持ちが出てきました」(岩﨑さん)

 そして、患者会の活動を通して、岩﨑さんは安田先生と出会う。

 安田先生は、2013年から「群馬乾癬友の会~からっ風の会~」の相談医を務めており、乾癬とその治療について講演をしたり、患者さんからの相談を受けたりしている。

「乾癬について話し合える仲間と出会えることが、患者会のいちばんのよさといえるでしょう。そして患者さん自身が治療について前向きに考え、患者さんにとってより良い選択をするために、乾癬という病気や治療についての知識を身に付ける場としても有用と考えます」(安田先生)

 岩﨑さんは安田先生の講演を聞き、先生と話をすることで病気を正しく理解できたという。実際に治療を続けている患者さんの「リアルな声」に触れ、乾癬についての正しい知識を得たことで、岩﨑さんの「不安」は「希望」に変わる。

「ネットの情報だけを見てひとりで考えていたときは、悪い方にばかり考えてしまっていました。でも、患者会に参加したことで、しっかり治療をすれば、治らなくても乾癬を忘れてしまうぐらいふつうの生活ができるようになることもあるとわかったのです」(岩﨑さん)

「もっとよくなりたい」と
治療にも前向きに

 患者会や安田先生との出会いにより気持ちが変化した岩﨑さんは、「もっとよくなりたい」と治療についても前向きに考えるようになる。以前は、あきらめの気持ちから医師に何も話せなかったが、「よくなるための治療をしたいです」と伝え、その先の治療について相談を始めた。

 安田先生は、岩﨑さんのように、「自分がどうなりたいか」「どのような治療がしたいか」を考え、伝えられるようになるまでには時間を要することも多いと話す。

「つらい症状に苦しむ患者さんは、その先の治療や将来のことまでは、なかなか考えられないこともあるでしょう。そのような場合は、診察の中で治療への理解と対話を重ね、時間をかけて、どうしていきたいかを一緒に考えるようにしています」(安田先生)

 岩﨑さんは現在、症状が落ち着き安定する「寛解」の状態を維持できている。治療と定期的な受診は続けているが、その時以外、乾癬のことをほとんど思い出さないという。患者会の活動は続けており、以前の自分のように苦しんでいる人に、「私もそうだったけれど、変われますよ」と正しい知識を得ることの大切さを伝えていきたいと考えている。

疾患についてのさらに詳しい情報はこちら
https://kansen-chiryo.net/line/

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