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攻玉社での6年間の学びの中でも、とくに私に影響を与えたのは、中学3年生のときに1年をかけて取り組んだ「卒業論文」です。1年間かけて興味あるテーマを深く掘り下げていき、最終的に論文としてまとめるというもので、これを体験したことが大学の進路選びの原点になりました。
卒論のテーマはまったくの自由で、自分が興味を持っているものなら何でもよいとされています。私が選んだのは「北方領土問題」でした。小1から小4まで米国サンフランシスコで過ごしたことも関係しているかもしれませんが、欧米圏とは異なる独特の文化をもっているロシアという国に「おもしろいな」と早くから興味をもっていたんです。日本との友好関係では北方領土が障壁となっていることを知り、はたして、この問題は解決できるのかと思ったことがテーマ選びの理由です。
課題を進めるにあたって中3の夏に北海道の根室に行き、資料館や役所で資料を集めたり、元島民の方と会って話を伺ったりしました。また日ロ問題に取り組んできた政治家の鈴木宗男さんの勉強会に参加して話を聞いたり、著書を読んだりして、国益をかけた水面下のせめぎ合いがあったことを知り、政治や外交への関心がふくらみました。将来何らかのかたちで国益に貢献できる職業に就ければと考えて、高1で早稲田大学の政経学部に行くことを決めたのも、このときの学びが大きく影響しています。
中高一貫校は高校受験をしなくていい分、自分の好きなことや興味のあることに時間をかけて取り組めるというよさがあります。ですから、中高生の皆さんにはぜひパッションがもてる何かを探してほしいと思います。私の場合は北方領土問題でしたが、情熱を傾けられるものが何か見つかれば、大学や職業を選ぶときの指針になってくれるはずです。 それから何事にも恐れずにチャレンジをしてほしいとも思います。高校時代は、ボランティアクラブと英語ディベート愛好会に所属して、学校外の方たちと接する機会や、他校や他国の人たちとの交流の場をもつことができました。その中で人として成長することができたと実感しています。まずは恐れずにいろいろなことに挑戦してみてください。自分への自信にもつながっていくと思います。
私は現在、大手IT企業に勤務しています。会社を選ぶにあたって大切にしたのは社会貢献度が高いこと、ダイバーシティーが進んでいることの2点です。勤務している企業は、この二つが風土として根づいていました。
社会貢献と多様性を楽しむ力という二つの感性を養ってくれたのが中高時代の探究的学習の時間でした。社会的な背景を題材にしたものもあり、たとえば3・11で原子力が問題になったことを背景に原子力発電についてディベートしたり、憲法改正が議論されているときに集団的自衛権を認めるか否かのディベートを行ったりしました。授業でやっていることがテレビのニュースとリンクしていることも多く、授業以外に自分で考える時間を持つこともできました。
また英語の学習では英語圏の文化についても学びました。楽しい授業で異文化への興味を広げてくれたことは、ダイバーシティーの根っこを育ててもらえたと思います。大学に進んでから、海外留学生をサポートする「バディ制度」というプログラムに自ら手を挙げました。多様な背景をもつ海外の学生たちと過ごしたことでダイバーシティーが当たり前のものとして身につきました。これも出発点は英語の授業にあったと思います。
アカデミックリテラシーも探求的授業のひとつとして用意されていました。大学進学に向けて高校からの持ちあがりの生徒たちが受ける授業ですが、大学で何を学びたいのかを考えさせられたり、論文の基礎的な書き方を教わって4千字程度の卒業論文を書いたり、自分で問いを立てて検証していく姿勢を身につけることができました。
卒業生たちには、それぞれの個性や思い、考えを否定せず、他者を尊重することができる共感力の高い人たちが多いように感じます。母校大好きな卒業生が多いことも特徴かもしれませんね。社会人になってからも、とくに理由もなく先生に会いにいったり、部活の様子を見にいったりする卒業生がたくさんいます。何かあると戻りたくなる学校なんです。
中高から大学まで、日々の学校生活を通じて大切にすべきものをじっくりと根づかせていくことができる点、それから友人はもちろん、先生方との強い結びつきがもてる点は、付属校ならではのよさではないかと思います。
高校時代の目標は教師になることでした。そのためにも世界の教育現場を見ておきたいと思い、大学2年生のときに、まずは交換留学生として1年間、教育システムの進んでいるスウェーデンに留学しました。さらにスウェーデンを拠点にヨーロッパ諸国を回ったり、留学終了後にプライベートでアフリカ、アジアを回ったり、「教育」を軸にさまざまな国の文化を体験しました。訪れた国は最終的に34カ国にのぼります。
「世界を見て回りたい!」という気持ちを強くもつようになったのは、高2の地理の授業がきっかけです。授業は毎回、取り上げる国の写真や動画を見せてくれて、それをもとに感じたことをグループディスカッションするスタイルでした。知らない国のことをビジュアルで知る体験が、世界の国々への興味と関心を一気に広げてくれたんです。
同時に、いろいろな世界の人とつながりたいという思いも強くなってきて、「それには英語が不可欠。それも使える英語じゃなきゃ!」と考えるようになり、英語の授業に熱心に取り組むようになりました。使える英語に磨きをかけたいと、学校が用意してくれている英語関連のプログラムや英語のスピーチ大会にも積極的に参加しました。高校生になるまで英語は得意ではなかったのですが、鷗友学園は英語のプログラムも充実していて、随分と英語力をつけてもらったなと感謝しています。
現在は広告関連の企業にいますが、教師ではない道を選んだのも海外経験が影響しています。いろいろな国を回りながら情報をブログで発信していたのですが、私のブログをきっかけにアフリカやインドといった国に興味をもってくれる人たちが増え、「言葉」を発信することで、誰かの一歩をちょっと後押しできることにうれしさを感じるようになったんです。
まったく違う道に進んだように見えて、教育の仕事も広告の仕事も、ともに「言葉」を使う仕事です。言葉を使って教育するのも、言葉を使って発信するのも、人を変えていく点は同じ。それに気づいたときは、経験したさまざまなことすべてがつながっていたんだなと実感しました。その原動力となっていたのが、高校時代にともった「好奇心」という名の小さな炎です。後輩たちにも中高生時代の好奇心を大事にして、その火をともし続けてほしいなと思います。
聖学院には国内外での体験研修プログラムが多く用意されています。その中でもガツンといえるほど価値観を転換させられたのが、中3のときのタイ研修と高3夏のカンボジア研修の二つのプログラムでした。
タイ研修は、タイ北部の孤児院にいる少数民族の子どもたちと交流するプログラムですが、それまで考えたこともなかった貧困や差別、経済格差といった問題を突き付けられることになり、自分の視野がいかに狭かったかに気づかされました。
カンボジア研修は、女性の自立支援を目的としたツアー会社のビジネス補佐に関わりました。その会社ではラベンダー色のジープで女性ドライバーが観光案内をする活動をしており、年間のツアー申込数を増やすことが僕たちのミッションでした。現地についてすぐに他のツアー会社のチラシを集め、ツアー内容の差異化を検討してプランを企画したり、作成したチラシの配布や試乗イベントの開催といったプロモーションを行ったりしましたが、そこで社会起業というものに触れる経験をしたことで、「自分の才能を人助けに使おう」と思うようになりました。
タイもカンボジアも、将来の方向性の軸を決定づけてくれる大きな体験だったと思います。海外といえば北米のイメージしかなく、将来はお金がもうかる仕事がいいと何となく思っていた自分が変わり、学びに対しても「何のために学ぶのか」を考えるようになったことは、自分でも大きな変化だと思います。
9月からペンシルバニア大学で学ぶ予定ですが、大学での専攻をビジネスにしたのも、二つの研修によって、経済的成功よりも社会貢献的な側面をもったビジネスがやりたいと考え方が変わったからです。具体的な将来はまだ決めていませんが、さまざまな国籍の人たちが集まる環境の中で、何をやるべきかを深く考え続けていきたいと思っています。
後輩たちにも、ぜひ外の世界を体験してほしいですね。海外でなくてもいい。ボランティアでも体験プログラムでも何でもいいので、家と学校以外の世界に触れてほしいと思います。いろいろな経験、さまざまな大人たちとの触れ合いは、きっと視野を広げてくれますし、価値観がガラリと変わるような刺激がもらえるのではないかなと思います。
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