企画・制作/AERA dot.ADセクション <PR>

2020年探求中学受験ナビ
取材・文/松田慶子 デザイン/洞口 誠、大内 和樹
  • 午後入試増加で入試の多様化が進む
  • 大阪を中心に中学受験率が上昇
  • 課題の多い世の中だからこそ
  • 卒業生インタビュー

大阪を中心に中学受験率が上昇 新タイプ入試を始める学校も

関西でも中学受験熱が年々高まっています。今年は特に女子の動向に変化があったようです。関西の中学受験事情に詳しい森永直樹さんに解説してもらいました。

日能研関西 取締役 森永 直樹さん
<PROFILE> もりなが・なおき
日能研関西 取締役。教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを経て2017年から現職。生徒への指導や保護者へのアドバイスを行うほか、私学教育、中学受験に関する講演などでも活躍。

女子の増加が牽引し、
6年連続で受験率増加

 少子化で小6人口の減少が続いている関西エリア(大阪、京都、兵庫、奈良、滋賀、和歌山)ですが、「中学受験は活況を呈している」と、森永直樹さんが話します。
「受験者数が増え、受験率は昨年の9・51%から9・64%に上昇。6年連続の上昇です」
 中でも大阪で受験生が増えたといいます。統一入試日(初日)の1月18日午前の受験者数は、昨年同日に対し388人増加。受験率は10・2%と2ケタの大台に乗りました。
「背景に、大阪市への人口流入が進んでいることがあげられます。通学のアクセスの良さもあり、あらかじめ私学への進学を考えているご家庭も多く含まれます」
 大阪市内を中心に、女子の受験者が増えた点も今年の特徴とも。共学校はもちろん、女子校の多くで受験者数が増加し、受験者の総数を押し上げたようです。 「大学入試改革の動向が読めず、受験生の不安感が高まっていること、また定員厳格化の影響で私立大学が難化していることなどを受けて、早くから大学付属校や、入試改革に対応しやすい中高一貫校に入っておこうという動きにつながったのでしょう。この先行きの不透明さに、女子の保護者がより敏感に反応し、女子受験生の増加につながったと考えられます」

「関関同立」人気が白熱
「進路が見える」がカギに

 大学入試改革や定員厳格化に対する受験生の不安は、学校選びにも表れているようです。
「『関関同立』、つまり関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学の付属・系属校人気が数年来続いていますが、今年は格段に勢いづいた印象があります」
「関関同立」付属校の中でも、同志社、同志社香里、関西学院が、人気・難易度ともに高いのはこれまで同様。ところが今年は、比較的狙いやすいといわれていた立命館と関西大学中等部にも受験者が集まったといいます。
「6年先がどうなるかわからないから、早いうちに進学先を確保しておきたいという気持ちが働いたのでしょう。立命館と関西大学中等部は、初日から全日程を通して出願数が増加し、難化する結果となりました」
 一方、近年は大学付属校人気に押され気味だった私立中高一貫校の中で、進学校や伝統校で人気の盛り返しが見られたといいます。
「四天王寺などの女子難関校が、受験者を大きく増やしました。また、指定校推薦枠を多く持っている伝統校にも人が集まりました。やはり“この学校に行けば、このレベルの大学には進めるだろう”と、進路が見える学校が、受験生に注目されたといえます」
 この付属校や推薦枠を狙う動き、特に女子に顕著だとも。男子に目を転じると、「従来通り推薦の有無などを重視せず、成績に見合う学校を上から順番に受ける傾向がある」と、森永さんが話します。
「男子では、最難関校の灘が最多出願数を更新しました。出願総数775人には、関東からの出願の218人も含まれます」
 合格後、実際に関東から移り住んで通学する生徒も目立つようになったとも。「“本気”の受験生が増えたといえますね」と森永さん。

「2日間入試」が定着
一方で入試日変更も

 ほかにも難化が進み、注目を集めた学校があります。昨年、須磨学園のグループ校になった夙川中学校がその一つ。
「今回は2回目の入試でしたが、IT教育等で知られる須磨学園の人気が後押しし、総出願数が昨年の256人から、一気に899人に増加しました」
 反対に、受験者数を減らしたのが神戸大学附属中等教育学校です。兵庫では例年、4日目に入試を実施する学校がほとんどなく、受験生は同校に集中していました。しかし今年は関西学院がこの日に後期入試を実施。白陵も5日目の入試を4日目にずらしました。
「付属校人気もあって、神戸大附属から関西学院に動いた女子が多かった。合格ラインが前期入試を7、8ポイント上回る、非常に難度の高い入試になりました」
 関西では、「実質2日間入試」といわれるように、多くの受験生が午後入試を活用し、初日と2日目で計3、4回試験を受けて学校を決めます。今年は4日目以降の入試がさらに減り、より短期決戦型になったといえます。しかし一方で、関西学院のような動きもあり、「来年も入試日の変更に踏み切る学校が出てくる可能性はある」と、森永さんが指摘します。
 人気や試験の受けやすさで倍率が大きく変わるだけに、引き続き情報収集は欠かせないようです。

入試スタイルや
問題の傾向にも変化が

 入試のスタイルについては、どうだったのでしょうか。
「英語入試の増加が目を引きました。今年は実施校が40校になった。ただし、帰国子女レベルの英語力を要する学校と、英検3、4級でよしとする学校が二極化していて、数としては後者が多い。そのため英会話教室に通っている子が、“英語だけで受けられる学校があるなら受けてみよう”と受験するようなケースも増えています」
 新しいタイプの入試も登場し、注目を集めました。
「親和の『プレゼンテーション入試』や、追手門学院大手前のロボットプログラミングの「WIL入試」などです。どちらも教科の試験はなく、小学校の成績や面接、当日の様子から適性を見ます。入試を実施した学校は、“数、質とも想定していた通りの生徒が集まった”と手応えを得ている様子です。今後もこのタイプの入試は増えそうですね」
 英語入試同様、「プレゼンが得意」「プログラミングが好き」という子が受験することが多いとも。受験生の多様化も進みそうです。
 では、気になる出題傾向は?
「昨年から引き続き、適性検査型の問題が増えています。文章から読み取った情報を元に、考え、意見をまとめるような問題です。各教科で大問の一つとして出題する学校が出てきている。大学入試で重視されるようになった思考力につながる力を、中学入試でも評価しようという意図でしょうね」
 やはり来年以降もこうした傾向が続くことは間違いなさそうです。
「新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛で、子どもたちは勉強に集中しにくい状況でしょう。でも6年生の多くは、何年も前から受験の準備をしてきているので、来年の入試では、近年の流れを継続し、受験者の増加が予測されます。ぜひモチベーションを維持して頑張っていただきたいですね」