2020年探求中学受験ナビ

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社会が大きく変わろうとしている現在、教育の重要性がますます高まっています。学習指導要領も改訂され、学校教育では新しい学びが導入されつつあります。とくに、正解がひとつではない世の中を生きていくための「探究力」は、子どもたちにとって必要になる力といわれています。この変化に伴い、中学入試の現場でも、入試方法や入試内容は年々変わってきています。今年の中学受験について、そして「探究的学び」について、専門家からメッセージをいただきました。
取材・文/石渡真由美 撮影/片山菜緒子 デザイン/洞口 誠、大内 和樹
  • 午後入試増加で入試の多様化が進む
  • 大阪を中心に中学受験率が上昇
  • 課題の多い世の中だからこそ
  • 卒業生インタビュー

午後入試増加で入試の多様化が進む読解力や思考力を試す問題も増加

大学入試改革が錯綜するなか、中学受験も大きく変わりつつあります。2020年度入試ではどんな力が求められたのでしょうか。中学受験の動向に詳しい森上展安さんに解説していただきました。

森上教育研究所 代表 森上 展安さん
<PROFILE> もりがみ・のぶやす
学習塾塾長を経て森上教育研究所を設立。塾や私立中高一貫校に向け、情報発信やコンサルティング等を行う一方、保護者の悩みに応える「わが子が伸びる親の技(スキル)研究会」を主宰。

受験者数は4万人を突破
中堅校も厳しい戦いに

「近年、首都圏の中学受験者数は増加傾向にありましたが、今年は2月1日私立中学受験者数が約1300人増え、ついに4万人を超えました。2月1日入試では、受験者数が募集定員を上回り、厳しい戦いになりました」
 2020年度入試の受験者数増加について述べる森上展安さんはこう続けます。
「ここ数年の受験者数の伸びは、首都圏の小学6年生の人口増加の影響がありましたが、今年は人口が増えたのは東京のみで、千葉・埼玉・神奈川の3県は減少しています。にもかかわらず、受験者数が増加したのは、いまだ揺れ動いている大学入試改革に対する不安からくる中高一貫校への期待が大きいからだと思います。また今後、豊島岡女子や本郷などの私立中高一貫校や、武蔵や両国など人気の公立中高一貫校が、高校からの募集を停止することから、高校受験を回避する動きも見られます」
 御三家をはじめとする難関校や進路が保証されている大学付属校、近年進学実績を伸ばしている共学校は例年通り人気でしたが、今年は中堅校の男子校、女子校の倍率も大きく跳ね上がりました。特に、千葉・埼玉・東京23区東部の主要な入試(第1回の入試)の受験者数が大きく増加しました。これらに加えて、茨城の受験者も増えたのが特徴です。
「増加要因としては、一つは湾岸地区を含めた東京東部のマンション開発が進み、教育熱心な家庭が増えたこと。もう一つは埼玉・千葉・茨城の公立中高一貫校開校に伴い、私立も受験する子が増えたことが考えられます」

午後入試を利用して
早めに合格を手に入れる

 今年の入試で特徴的だったのが、午後入試の受験者数の増加です。
「午後入試といえば、かつては広尾学園や東京都市大等々力など共学化した学校が生徒を集めるために実施していましたが、今では御三家や早慶などのごく一部の難関校を除き、多くの学校が実施しています。この3年で受験者数は約6000人ずつ増加し、ついに今年は5万人規模になりました」
 午後入試は受験生の負担を減らすために科目を2科目にしたり、算数入試や英語入試、自己表現入試など、自分の得意分野で勝負したりすることができます。今年は田園調布学園、湘南白百合学園などの女子校が算数入試を始めたことが話題になりました。
「首都圏の中学入試は、2月1~3日をピークに、遅くても6日には結果が出ます。日程が後になるほど募集人数が減って高倍率になるため、できるだけ早く合格を取ることが重要です。午後入試のメリットは、受験校が増えることによって、少しでも早い段階で合格を手に入れられることです。一方、学校側は上位校受験者の受け皿として優秀な子を確保することができます。つまり、両者のマッチングにより受験者数が増加しているのです」
 一方、大学入試が今後どうなるかわからないなか、今年も大学付属校は人気でした。
「ただし、早慶やGMARCHなどの難関大の付属校志望者は頭打ちの状態で、高倍率を懸念してやや減少している学校もあります。その分、日大や東洋大、東海大などの中堅付属校や、付属校ではないけれど、優先的に進学ができる系属校を受ける受験生が増加しました。また、学習院や成蹊などの“半付属校”にも人気が集まりました。“半付属校”とは、内部進学の保証を得ながら、他の大学への進学も選択できる学校です。こうした学校に人気が集まる背景には、やはりいまだ不透明な大学入試に対する不安があるのでしょう」

入試では知識の量よりも
読解力・思考力を重視

 では、今年の入試内容はどうだったのでしょう?
「近年、入試の多様化が進んでいますが、今年も様々な入試が実施されました。特に午後入試は、算数入試や英語入試といった得意科目で勝負する入試のほかに、思考力や表現力を問うプログラミング入試やプレゼン型の自己表現入試などがありました。こうした入試を行う学校は、小学6年生の現時点の成績よりも得意なものを評価したり、これから伸びそうな可能性を見たりしているのです」
 大学進学実績だけでなく、子どもの個性を生かせる学校へ入れたいと考える家庭が増えてきているようです。
 一方、4科目入試は新学習指導要領に合わせて、読解力や思考力を試す問題に変化しつつあります。
「特に今年は、国語と算数の設問の長文化が多く見られました。国語に関しては、選択問題の文章までもが長くなっています。設問の意味を正確に捉え、文章を丁寧に読み、内容をしっかりつかみ取る。つまり読解力が求められているのです」
 理科・社会は例年以上に時事問題が出題されました。今年は地球温暖化や昨年大きな被害をもたらした台風の問題を出す学校が多かったようです。
「こうした問題を出す狙いは、日頃から身近なニュースや問題に関心を持ち、自分のこととして捉え、主体的に考えているかを見ているのです」
 では、こうした力をつけるには、どうしたらいいのでしょうか?
「国語の読解は、段落を小分けにして、意味のまとまりごとに精読して理解を確かなものにする練習をするといいでしょう。理科・社会は新聞などに載っている図やグラフ、写真などにも目を通し、トピックスについて親子で話し合う習慣が身につくといいですね」
 最後に今後の中学受験について森上さんはこう話します。
「多くの教育費がかかる中学受験は景気に大きく左右されます。来年の入試がすぐ、新型コロナウイルス感染症の影響で、受験者数が大幅に減少するとは思いませんが、再来年あたりから徐々に変化が出てくるかもしれません」