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2023年の首都圏私立・国立中学入試の受験者総数は過去最多※を更新しました。
わが子の可能性を信じて、より伸ばしてあげたい、
だからこそ、わが子にとって「最高の学校」を選びたい、
そんな思いで中高一貫校を選ぶ家庭も増えています。
小社発行のムック『偏差値だけに頼らない中高一貫校選び2024」では
“偏差値”という物差しだけにとらわれず、多角的な視点を持って
中学受験や中高一貫校について取材しました。
こちらを元に、子どもの将来を見据えて学校を選ぶために
押さえておきたいキーワードや、動向について紹介します。
デザイン/dot works、スープアップデザインズ 制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ 企画/AERA dot.AD セクション、株式会社シーエム
※今春2023年の首都圏の私立・国立中学校の受験者総数〈推定〉首都圏模試センター調べ(2023年3月4日時点)
子どもの個性を伸ばし、将来の可能性を広げられるような学校選びのために
押さえておきたい社会の動向や、特色ある教育を展開する学校を紹介します。
偏差値や大学合格実績だけでわが子に合う学校を選ぶことはできません。
学校選びで保護者が持っておくべき知識と心構えを専門家に聞きました。文=兒島佑美子 構成=仁比菜央 写真=本人提供
安田教育研究所代表
安田 理さん
大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌や教育書籍の企画・編集を担当。教育情報プロジェクトを主宰し、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年に安田教育研究所を設立。教職員研修・講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍。
現代は、グローバル化や日々進化を続けるAI技術、環境問題など、未来が予測しづらいVUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)の時代。「偏差値の高い大学に入学して大企業に就職すれば将来安泰」というわけではなくなってきました。
また、日本は少子高齢化が進み、生産年齢人口は着実に減っていきます。これからの日本の経済は縮小する国内市場だけではやっていけず、海外との関わりがより強くなるでしょう。
こうした時代において社会で活躍するには、主体性や創造性、コミュニケーション能力などの人間力が必要になってくると考えられるようになりました。今、それらの力を養うことを目的とした、新たな学びや教育のトレンドが注目されています。
これまでの教科学習中心の教育においては、学校ごとの教育内容にあまり違いはありませんでした。しかし、人間力を育む場としての教科学習の枠を超えた授業、課外学習や行事といったところに、各学校のポリシーや個性が表れてきています。そうした特色に注目してみると、子どもに合った学校を選ぶヒントが見つかるはずです。
学校選びの軸を定め、
わが子をよく知る
昨今は特に、「グローバル教育」「STEAM教育」「非認知能力」「体験学習」「探究」の5つのキーワードに関して特徴のある教育を展開する学校が増えています。同じキーワードでもカリキュラムの中身は学校によってさまざま。その特色から、学校が育てたい人物像や学校が大切にしていることを読み取り、学校選びに役立てていきましょう。
例えば、「グローバル教育」一つとっても、海外大学に進学したり、国境を越えて仕事をしたりする際にやっていけるだけの英語力の向上に力を入れる学校もあれば、世界の社会課題の解決に向けて行動できる視野を養うために、海外研修で発展途上国に行く学校もあります。
だからこそ、学校選びにおいては保護者自身が「中高一貫校教育で何を重視するのか」という軸を持っておくことが大切なのです。学校を見る前に、まずは保護者の間で「人生において大切なものは何なのか」「わが子はどういう人に育ってほしいのか」を話し合って、その軸を明確にしておきましょう。
そして、わが子についてよく知ること。「どういう分野が向いているのかな?」「どういう環境だと成長できそうかな?」と、日頃から子どもを観察したり、子どもと意見交換をしたりと向き合ってみてください。そうすることで、学校を訪れたときに「この学校はSTEAM教育に力を入れていて、専門的な知識のある先生や設備が充実しているから、ロボットやプログラミングが好きなこの子には合いそうだな」とか「この学校の雰囲気だったら楽しく6年間過ごせそうだな」ということが分かってくるはずです。
その上で、保護者の独りよがりではなく、わが子が「行きたい」と思う学校を選ぶようにしましょう。
安定が確約された
人生のレールはない
わが子に苦労をかけさせたくなくて、安定した人生を歩むための進路を用意してあげようとする保護者は少なくありません。しかし確実で順調な人生の道というものはありません。挫折することもあるでしょう。保護者の敷いたレールに乗るだけの子どもは、想定外の事態が起きたときに自分で道を切り開けません。
本当の意味での「将来を見据えた学校選び」とは、子どもがのびのびと能力や感性を伸ばして、自分で道を切り開ける人間へと成長できる環境を見つけてあげることです。
保護者はついつい偏差値や世間の評判を気にしてしまいがちですが、それだけにとらわれてしまってはいけません。
学校とは、本来学力だけでなく人間力を養う場でもあることを念頭に置きましょう。わが子をよく観察して興味や得意を見つけてあげることで、「この学校はわが子に合った学校なんだ」と自信を持って通わせられる学校に出合えるはずです。
学校を選ぶ際には、卒業後の進路を考えることも重要です。変わりゆく大学受験の現状から、中高一貫校の学びで身につけたいことを専門家に聞きました。文=兒島佑美子 構成=仁比菜央 写真=本人提供
学校法人河合塾 教育研究開発本部 主席研究員
近藤 治さん
河合塾入塾後、長年にわたり大学入試動向分析を担当し受験生へ入試情報の発信を行う。教育情報部部長、中部本部長などを歴任。
この30年で、大学入試の環境は大きく変化しています。1992年では、高校を卒業し現役で4年制大学に進学する人は5人に1人でしたが、今は2人に1人。さらに大学志願者のうち入学できたのは54.2%だったのが、今では90%を超えています。つまり、4年制大学に進学すること自体が評価されていた時代から、どの大学に進学し何を学んだのかを問われる時代になったと言えるのです。
入試方法に関しても、今の親世代が受験生だった頃の常識とは大きく変わってきています。30年前はほとんどの人が一般選抜入試を受験していたのに対し、2022年の調査では、総合型選抜(旧AO)入試(以降、総合型)と学校推薦型選抜入試(以降、推薦型)を利用する人が受験生のおよそ半分を占めるまで増加。面接やプレゼンテーションを通して受験生の学習意欲や適性を評価する総合型は、推薦型とともに、今の小学生が大学受験をする頃には、割合はもっと高くなっていることが予想されます。
学校生活のすべてが
受験勉強につながる
大学には、世の中が求めている人材を育成して社会に送り出すという役割があります。大学入試はそのための選抜機能なので、その時代に必要とされる人材像が反映されていると私は考えています。
30年以上前の日本は工業社会で、良質な製品を早く正確に作る力が求められていました。なので、たくさんの知識を整理し、正しく活用する技能を測っていたのです。
一方これからの時代は、いろいろな人と協働しながら新しいものを生み出す能力が必要とされる知識基盤社会。知識・技能だけでなく、主体性・創造性・協働性が求められているからこそ、総合型や推薦型といった学習意欲や表現力をもとにその大学での学びに対する適性を測る入試方式の需要が高まっているのです。
だからといって、一般選抜で試される力をないがしろにしていいというわけではありません。知識・技能という土台があってこそ、思考力・判断力・表現力を伸ばすことができ、その上で備わってくるのが主体性・創造性・協働性です。中高生は勉強も含め、学校生活全体の中でこれらの能力を培っていきます。学校選びでは、わが子のそうした能力が伸ばせる環境かどうか見極めてあげることが、ポイントとなるでしょう。
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*本記事は「偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び 2024」本誌からの一部抜粋です。
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